平成29年12月18日(月)  目次へ  前回に戻る

善の心を持っている、と思っていた善のネコが、

突然悪のネコに変わったりすることもあるのだから、突然怒りだすひと↓がいてもしようがないであろう。

寒いのに、月曜日からみなさん大変ですなあ。

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唐のひと、婺州の明招寺に住した徳謙禅師、ある冬の日のことじゃが、

天寒、上堂。衆纔集。

天寒、上堂す。衆わずかに集まる。

たいへん寒い日で、禅師が講話のために僧堂に入ったところ、僧侶たちはやっと集まってきたところであった。

「ぶるるるる」「ちゃむいよー」

みんな寒いので震えています。

禅師は僧侶たちを見渡して、言った。

風頭稍硬、不是汝安身立命処。且帰暖室商量。

風頭やや硬し、これ汝ら安身立命の処にあらず。しばらく暖室に帰りて商量せん。

「ここは風当たりがちょっと強いな。ここはおまえたちが身を落ち着け、生きる意味を考える場所というわけにはいくまい。暖かい部屋に戻ってから、どうするか考えてみることにしよう」

「わーい」「わーい」「うれちいなー」

便帰方丈。大衆随至立定。

すなわち方丈に帰る。大衆随いて至り、立定す。

禅師は自分の部屋の方へお戻りになった。僧侶たちもそれにつき随い、立つ場所を定めた。

すると、なんということでありましょうか。

禅師は、突然怒りはじめたのである。

纔到暖室、便見瞌睡。

纔かに暖室に到るや、すなわち瞌睡(かっすい)を見んとは。

「暖かい部屋に戻ったと思ったら、もう居眠りしはじめおって!!」

「怒ってきまちたー!」「逃げろー!」

以拄仗一時趁下。

拄仗を以て一時に趁下(ちんげ)せり。

手にした杖を振り回して、みんないっぺんに追い出してしまった。

「わーい」「わーい」「あー、こわかった」

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「五燈会元」巻八「明招徳謙禅師」より。言われたとおりについてきたので、自律性が無いのがいけなかった・・・んですかね。禅のひとは突然怒り出すから難しいです。

ちなみに、禅寺では、旧暦の十月一日に僧堂の炉に火を入れるんだそうで、これを「開炉」というんだそうです。

永平六世、肥後出身の名僧・大智祖継(正応三年(1290)生、貞治五年(1366。南朝の正平二一年)示寂)、「開炉」の偈頌(「大智禅師偈頌」213番にいう、

風頭稍硬大家知、 風頭の稍(やや)硬きことは大家知る、

且聴商量暖処帰。 しばらく商量して暖処に帰するを聴(ゆる)さん。

般若如同大火聚、 般若(はんにゃ)と如同(にょどう)に、大火聚まるも、

近前焼却両茎眉。 近前せば焼却す、両茎の眉。

 風あたりがちょっと強いことはみんなわかっているから、

 しばらくの間、暖かいところに戻って考えることを許そう。

 しかし、火は智慧(般若)と同じ力を持つから、大いに燃えている炉に、

 あんまり近づきすぎると、おまえの両眉が焼けてしまうぞよ。

一気に智慧に近づくと危ないんです。じっくり近づいていかないと。おいらも何十年もかけて近づいているはずなんだが、最近は遠ざかってような気もしたりする。

 

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