平成29年7月17日(月)  目次へ  前回に戻る

ぶた漁師でぶー。

うわーい、また平日が来るだよー。絶望だ。

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「なにを絶望しておりますのじゃ」

と舟を操りながら漁師は言って、「ああ、ホイホイ」と歌い出した。

天下滔滔皆是也、風波満地江河仮。

天下滔滔たるはみなこれなり、風波地に満ちて江河は仮ならん。

天下にほとぼしるものは、すべて水である。風が起こす波は地表すべてに満ち満ちていて、川の上だけだと思うのは大間違い。

ハー、ホイホイ。

その波の中、

鼓ニ行歌君莫訝、誰知者、離騒荘子吾其亜。

ニ(かじ)を鼓して歌を行(うた)うも君、訝しむなかれ、誰か知る者ぞ、「離騒」「荘子」、吾その亜なり。

梶棒を叩いて拍子をとりながら歌をうたうのを、おまえさん、不思議がるでない。

いにしえより「離騒」や「荘子」には漁師が登場するが、わしはそのひとたちの後継者なんだから。

「楚辞」の「離騒」には有名な屈原と漁師の会話からなる「漁父辞」があり、「荘子」には孔子やその弟子たちと舟に乗った「客」(漁父)との会話を記した「漁父章」があります。

わしらは自由な境涯にあるんです。

一尺篷舟双槳打、緑蓑青笠人如画。

一尺の篷舟、双槳(そうしょう)を打ち、緑蓑に青笠、ひと画の如し。

一尺の高さの苫舟に乗り、二本のカイを操って、緑の蓑を着、青い笠をかぶった、わしはまるで絵の中にひとのようではないか。

ハー、ホイホイ。

日も暮れてまいりました。

溌剌黄魚穿柳掛、収綸罷、提壺フ共樵夫話。

溌剌たる黄魚を柳に穿ちて掛け、綸(いと)を収め罷めて、壺を提ぐるのフに共に樵夫と話す。

ぴちぴちと撥ねる黄色い魚を柳の枝に突き刺して肩にかけ、釣り糸をしまいこんで、酒壺を前に、友人のキコリと語り合うことにした。

友だちも食い物もあるわけである。

「わっはっは、平日もこうやって生きていけばいいのですじゃよ」

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清・「百末詞」より「漁家傲・漁父」「漁師が偉そうにする」の節で「漁師のうた」)。

なーるほど。わかりました。よし、明日からそうすることにしまーす。

 

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