平成31年2月7日(木)  目次へ  前回に戻る

ラーメンを食う炭水化物ライオン。こんなときは善いことも悪いことも考えず、シアワセである。

今日はちょっと暖かかったらしいです。洞穴の中なので外のことはあまりわかりませんが。

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鎌倉時代のことですが、道元禅師がおっしゃった。

師翁問虚庵和尚、学人不思善不思悪時如何。

師翁、虚庵和尚に問う、学人(がくじん)善を思わず悪を思わざるの時、如何、と。

「師翁」というのは師匠の師匠のことです。ここでは、道元の最初の師匠であった明全和尚(道元と一緒に渡宋して、宋の地で亡くなった)は日本臨済宗の祖とされる栄西禅師の弟子なので、栄西のことを指しています。虚庵和尚は、栄西が宋で師事した虚庵懐敞(きあんえしょう)のこと。「学人」は、弟子として学んでいる栄西が自分のことを指して言っています。

師匠の師匠である栄西禅師がチャイナに留学していたとき、虚庵懐敞和尚に質問した。

「わたくしは、善いことも考えず、悪いことも考えない境地に到った(ようなんですがそうだ)とすれば、どう評価いただけますか」

虚庵答えて曰く、

本命元辰。

本命の元辰なり。

「本命」は生まれた年の運勢、要するに与えられた自分の本来あるべき状態のことで、「元辰」は「正月元旦」です。

「生まれた年の元旦だな」

おまえは自分のあるべき状態に戻ったといえよう、ということらしいです。

「わーい」

栄西禅師は喜びまして、

恁麼則不従今日去也。

恁麼(いんも)ならば今日より去らざらん。

「恁麼」は「このように」。

「そういうことでしたら、もうこの境地から去らないようにいたします」

虚庵曰く、

若恁麼則不妨今日去也。

もし恁麼なれば今日去るも妨げず。

「ほんとうにそういうことになっているなら、すぐにその境地から去ってもよい」

一つの状態に固定されてしまうのはよろしくない、ということらしいです。そして、もう日本に帰ってよろしい、というお許しでもあるようです。

「うーん(、日本に帰るのはそんなにうれしくないけど)、ありがとうございます」

師翁礼拝。

師翁礼拝す。

師匠の師匠の栄西は、虚庵を拝んだ。

虚庵は言った、

面南看北斗。

南を面にして北斗を看ん。

「南を向いたままで北斗星が見えるじゃろう」

自由な境地を得たであろう、ということらしいです。

・・・・・・という話をして、道元禅師は黙り込んでしまいました。そして、ぎろぎろと弟子たちを見回したあと、

師良久云。

師、やや久しくして云えり。

しばらくしてから、禅師はおっしゃった。

祖師本命元辰、微笑破顔一新、不仮黄華翠竹。扶桑日出逢春。

祖師の本命元辰、微笑破顔を一新し、黄華翠竹を仮らず。扶桑、日出でて春に逢う。

「祖師」はおシャカさま以来の代々のお師匠方、の意ですが、ここでは「師翁」である栄西のことを指しているのだと思います。

「栄西禅師の生まれた年の元旦、すなわちあるべき状態は、にこりと笑って摩訶迦葉尊者に法を伝えたおシャカさまの以心伝心を、また新しくしたわけじゃ(法を受け継いだのだ)。黄色い花や緑の竹といった大自然の教えを借りることなく、師匠の虚庵和尚から直接いただいたんだなあ。扶桑の国・日本では、(栄西が禅を伝えることで)教えの日が昇り、春がやってきたわけである」

もうすごい深夜なんで、「拈華微笑」とか「鬱鬱黄華、無非般若」とか話していると長くなりますので、また今度にいたします。

下座。

座を下る。

本日はこれでおしまい。

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「道元禅師語録」より。おいらももうリタイアしているんで毎日が「今日去るも妨げず」の境遇なんですが、明日の夜から関東地方雪が降って寒いらしいんで、明日からどこかに避寒しようと思います。どこに行こうかなー。

 

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