平成29年12月20日(水)  目次へ  前回に戻る

世の中のやつがみんなぶたとのレベルのやつだったら、おいらだって中ぐらいの賢者扱いされたかも知れないのになあ・・・。

今日はおえら方との飲み会。焼酎飲んでいい気分で帰ってきた。

酒席では以下のようなぐらいの堂々たる対応をしてきた・・・と思うんですが・・・。

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お殿様がおっしゃった。

用兵之道、何先。

用兵の道、何をか先とする。

「軍事行動の際には、優先事項は何であろうかのー?」

わしは、

「くっくっく・・・」

と含み笑いをして、答えた。(含み笑いをすると賢こそうに見える・・・ではありませんか)

先明四軽二重一信。

まず、四軽、二重、一信を明らかにす。

「まずは四つの「軽くする」、二つの「重くする」、一つの「信用される」を御理解なさることでござる」

「どういうことじゃー?」

「くっくっく・・・、まずは四軽をご説明しましょうぞ」

わしはお答えしました。

使地軽馬、馬軽車、車軽人、人軽戦。

地をして馬を軽くせしめ、馬をして車を軽くせしめ、車をして人を軽くせしめ、人をして戦を軽くせしむるなり。

「土地によって馬を軽くし、馬に車を軽くさせ、車に人を軽くさせ、人に戦いを軽くさせる、これを四軽と申しまする」

「わけがわからんぞー」

「御意。くっくっく、では、その意味を説明いたしましょう」

1 明知険易、則地軽馬。

険易(けんい)を明らかに知れば、すなわち地、馬を軽からしむ。

険しくて攻めがたい地形か、平らかで攻めやすい地形かをあらかじめ明らかに知っておけば、その土地において馬を便利に使えます。これが土地によって馬を軽くする、ということでございます。

土地情報を入手して、主要な武器の使いやすいように地の利を生かせ、ということですね。

2 芻秣以時、則馬軽車。

芻秣(すうまつ)時を以てすれば、すなわち馬、車を軽しとす。

まぐさを時宜に応じて与えてやれば、馬に栄養が行きわたり、馬は車を軽々とひっぱることが出来ます。これが馬をして車を軽くさせる、ということでございます。

燃料の補給を適切に行って、機動戦を有利に展開せよ、ということですね。

3 膏鐗有余、則車軽人。

鐗(かん)に膏すること余り有れば、すなわち車、人を軽しとす。

「鐗」は車の軸を覆う金属部品で、ここが潤滑に回ると車が動きやすい。

車軸にあふれるほどに潤滑油をさすことができれば、人を乗せた車は動きやすくなります。これが車をして人を軽くさせる、ということでございます。

装備品の整備に必要な資材の補給を適切に行い、部隊の運用速度を高めよ、ということですね。

4 鋒鋭甲堅、則人軽戦。

鋒鋭く、甲堅ければ、すなわち人、戦を軽しとす。

ほこさきの鋭い性能のよい武器、堅牢なかぶとのような優れた防具が支給されていれば、兵士は格闘しやすい。これが、人をして戦を軽くさせるということでございます。

装備を最新鋭にして、兵士の能力を最大限発揮させて、白兵戦を有利に展開せよ、ということです。

以上の「四軽」は戦術面での鉄則でございまする。

「なーるほど。では、「二重」「一信」とはどういうことじゃー」

進有重賞、退有重刑、行之以信。

進めば重賞有りて、退けば重刑有り、これを行うに信を以てす。

危難を犯して命令に従う者は重く賞を与え、命令に違反して逃走した者には重い罰を与えること。賞罰を与えるに当たっては、先に命令と賞罰の基準を明らかにし、必ずそれにたがわないようにして、兵士に信用させること。

これが「二重」と「一信」にござります。これらは軍法の鉄則にございまする。

審能達此、勝之主也。

審らかにこれによく達すれば、勝の主ならん。

明確にこれらの原則を御理解されれば、勝利を制することができましょう。

「なーるほど。勉強になったのー」

「御意にござりまする。くっくっく・・・」

とわしは含み笑いしたのであった。

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「呉子」治兵篇第三より。すみません、ついつい自分のように語ってしまいましたが、「わし」と書いてあるひとは戦国期の大軍師・呉起さまで、なんかあほうのように描いてしまいましたお殿様はぶたとのではなくて、魏の武侯さま(在位前395〜前370)です。実はかなり有能な方でいらっしゃいました。ああ、だんだん酔いが醒めてきた。今日もおれは昼間も酒席でもダメだったなあ。

 

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