平成29年3月19日(日)  目次へ  前回に戻る

水の中に引き込んでシリコダマ抜くのは得意でカッパ。↓もおいらのしわざかも。ただし、現在はまだ本土は寒いので、沖縄にジュゴンのシリコダマでも抜きに行きたいでカッパ。

うわー、もう日曜日。今週は明日も休みだとはいえ、それでももう一日しかないのだ。絶望的状態。

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南宋の時代のことでございますが、都・臨安の装潢師・陸明から聞いたお話でございます。

陸明の跡継ぎ息子が、そのころ十八九の修行中で、いろいろ叱りつけながら教えていたのだそうですが、ある日、こいつが突然いなくなってしまった。

おやじの陸明は

「修行がきつくて逃げ出したか」

と舌打ちしたが、大事な跡取りである。

其家散求之数日、或言其在三十里外。

その家、これを散求すること数日、あるひという、それ三十里外に在り、と。

一家をあげて手分けをして探すこと数日に及んだが、ある人から、「彼なら三十チャイナ里ほど離れたところで見かけられたようだ」という情報があった。

三十チャイナ里≒二十キロメートルぐらいでしょうか。

そこで人をやってみたところ、

得之於橋上、猶行不已。

これを橋上に得るも、なお行きて已まざるがごとし。

とある橋の上でようやく彼を捕まえたが、そのときまだ、さらに先に行こうとしていたのであった。

「修行がツラいからと言って逃げ出すとは何事か!」

と早速叱られたのだが、息子は「それは誤解ですよ」と否定した。

彼の言によれば、

見人家焚楮泉祭殤鬼、過其傍、即覚罔罔不自制。

人家に楮泉(ちょせん)を焚きて殤鬼を祭るを見、その傍を過ぎるに、すなわち罔罔として自制せざるを覚ゆ。

ひとの家で紙銭を焼いて亡くなったひとをお祀りしているのを見ながら、そのそばを通った瞬間、自分で自分をコントロールできなくなったのだ。

で、そのとき、ふと前を見ると、

当前一持蓋者、自腰以上可弁、時回顧与語、遂踵之以行。

前に当たりて一の蓋を持つ者、腰より以上は弁ずべきが、時に回顧してともに語り、ついにこれに踵(つ)きて以て行けり。

前方に、ツボか何かのフタを持ったひとがいた。彼の姿は、腰から上ははっきりと見えたのだが、そこから下はぼんやりしていた。このひと、ときどき振り返ってコトバをかけてくれるので、そのひとのあとを、ふらふらとついて行ってしまった。

このひとがかけてくれたコトバは何も覚えていない。いや、そのときはわかったような気がしていたが、実際にはまったく何を言っていたのか理解できていなかったようでもある。

いずれにしろその後について、

歴村墅十余、日夜行不輟、亦不覚飢渇。

村墅十余を歴て、日夜行くこと輟(や)まず、また飢渇を覚えず。

あちらへこちらへと十いくつかの村を訪ね歩いて、昼も夜も歩き回っていたが、不思議と腹も減らずのども渇かなかった。

家人に橋の上で引き留められたときも、前を行くそのひとの姿しか見えず、そのあとについていかなければ、と足を速めたが、

人来益多、持蓋者乃没。

人来たることますます多くして、蓋を持つ者すなわち没す。

前方からどんどん人がやってきて、フタを持っていたひとは、その人々の中に姿を消してしまった。

そのとき、はじめて、自分の名を呼ぶ声が聞こえ、正気に戻ったのであった―――

というのである。

さてさて。

予族人侍其父飲別墅、忽有黄衣卒拱而趨、引之入池水中、幾溺。

予の族人のその父に侍して別墅に飲むに、たちまち黄衣卒、拱して趨り、これを引きて池水中に入れ、ほとんど溺るること有り。

わたし自身の親族で、そのおやじさんと一緒に郊外の別荘で酒を飲んでいたとき、突然、黄色い服を着た兵卒が拱手しながら走り込んできて、それに引っ張られて近くの池の水中に入れられ、溺れそうになった者がいた。

適有見者、救之得免。方其入水時、視猶陸也。

たまたま見る者有りて、これを救いて免れるを得たり。まさにその入水時、視ること陸のごときなり、という。

偶然それを見かけたひとがいて、救い出してくれたので溺れずにすんだのだが、水に引き込まれたときのことを聞いてみると、水中に入れられたという自覚は無く、ふつうに陸地の上にいるようにしか思っていなかった、ということであった。

この二人は、いずれも

僅脱鬼手耳。

わずかに鬼手を脱するのみならん。

ほんとうにぎりぎりのところで、悪質な精霊の手を脱することができたということなのであろう。

・・・なんだそうです。

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宋・佚名氏「鬼董」巻四より。おいらもどこかに行ってしまおうかな。遠くに行っても誰も探しに来ないだろうし、水中に入っても誰も助けてくれないだろうから、戻って来ることは無いような気がします。昨日は何とか帰ってきたが、今日は叔父さんちに久しぶりであいさつに行ったし、もうやることないから、明日あたりが大チャンスかも。

 

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