平成29年1月12日(木)  目次へ  前回に戻る

「あなたの人相を鑑定してあげましょう・・・む?むむ?むむむむむ?」。左図は「世界ぶた図鑑」に出る「いろんなぶたたち」の図である。それぞれのぶたを人相で区別するのは難しい。

実は肝冷斎はあまり職場では追い込まれていないんです。去年の前半は追い込まれていたけど、今年は追い込まれていないんだけど、ただ惰性で「追い込まれている」「もうダメだ、おしまいなのだ」「みなちゃん、さようなら」などと不吉なことを言っているだけなんですね。ああ、実はおいらはシアワセなのではないかなあ。

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そんなとき、

有相予者。

予を相する者有り。

「おまえさんの人相を鑑定してやろう」という人がやってきた。

そのひと、

謂面上部位多貴、処処指之。

「面上の部位、多く貴なり」と謂いて処処にこれを指す。

「ほう、案外えらくなりますな。顔のあちこちにその予兆が見えておる」と言って、ここにしわがあるからだとか、そちらにほくろがあるからだとか、いろいろと指摘してくれた。

だがわしは言いました。

「いやいや。

所憂不在此也。

憂うるところここに在らざるなり。

心配しているのはそこではないんですよ」

と。

「ほう、では一体?」

わしは言った、

汝相予一心。要包蔵得天下理。相予両肩。要担当得天下事。相予両脚。要踏得万事定。

汝、予の一心を相せよ。天下の理を包蔵し得んことを要するなり。予の両肩を相せよ。天下の事を担当し得んことを要するなり。予の両脚を相せよ。万事を踏み得て定めんことを要するなり。

「おまえさん、そんなことより、わしの心を鑑定してくれ。天下の理をこの中に包み込まねばならんのですからな。わしの両肩を鑑定してくれ。天下の事案を荷っていかねばならんのですからな。わしの両脚を鑑定してくれ。あらゆることを踏みしめていかねばならんのですからな。わっはっはっは」

「なんと」

雖不貴、予奚憂。不然、予有愧於面也。

貴ならずといえども、予なにをか憂えんや。しからずんば、予、面に愧ずる有るなり。

「えらくならなくても、わしは何にも心配しませんよ。それより、(天下の理を包み込んだり天下の事案を荷ったり万事を踏みしめたり、)そちらの方ができないなら、わしは人相に恥ずかしくて申し訳ないことになりますのでなあ」

わっはっはっは。

これはでかく出ました。かなりハイになっているぞ。

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明・呂坤「呻吟語」第160則

こんなこと言ったら、そのあとハイ状態が醒めて自分に戻ってしまったときにこそ、「恥ずかしくて申し訳ないことになりましたでちゅう」と落ち込みまして、でも「コドモだから許してもらえるカモ?」ということだけに一縷の望みを託するしかなくなるような気がいたしてきます。

ちょっと自分を励ましてみようと思ったが、やっぱりムリですね。少し客観的に考えれば、おいらを取り巻く環境は悪化しているばかりなのである。もうダメだ、おしまいなのだ、もうダメだ、おしまいなのだ。

(肝冷斎はおしまいなのでもうダメなのですが、のコトバ(「三相予」)は実際にはいいコトバなので、みなさんは積極的に受け止めていただくといいと思います。)

 

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