平成27年12月23日(水)  目次へ  前回に戻る

サルばどーる=だり「みかんの変容」。

やはりこの世は寒かった。明日からはまたあちらでぬくぬくと暮らします。下記のひとたちのように・・・。

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唐のころのことですが、湖北・巴卭(はきょう)の地に橘の園があった。

以下、めんどくさいので「橘」は柑橘類の「みかん」と訳します。

霜後見橘如缶。

霜後、橘の缶(ふ)のごときを見る。

霜の降りた冬、「ほとぎ」ほどの大きさに成長しているみかんが見つかった。

「缶」(フ)は小太鼓ぐらいはある円筒形の土器。「カン」と読むのは「鑵」の略字として使われているだけです。

「これはでかいな」

とひとびと集まって、

剖開。

剖(さ)き開けり。

切り割って中を調べてみた。

そしたら、中では

有三老叟象戯。

三老叟の象戯する有り。

三人の老人が将棋をしていた。

ひとびとが驚きあきれていると、老人の中の一人が、

橘中之楽、不減商山。

橘中の楽しきは商山に減ぜず。

「みかんの中は楽しいのう。まるで商山の山中のようじゃわい」

商山は河南あたりにある仙山と思われます。

もう一人が言う、

但不得深根固蔕耳。

ただ深根、固蔕を得ざるのみ。

「いやいやしかし、商山と違って、地中に深く入り込んだ根っこや、天につながった固いヘタが無いぞ」

もう一人は、何かをもそもそと食べている。よく見ると、

取龍脯食之。

龍脯を取りてこれを食らう。

龍の干し肉を引きちぎりながら食っているのであった。

やがて

「ああ、満腹じゃ」

と食い終わったらしい。

すると、

余脯化為龍。

余脯、化して龍と為る。

食べ残しの干し肉が、みるみるうちにまた龍になった。

ひとびとが見守る中、

衆乗之而去。

衆、これに乗じて去れり。

三人ともみなこの龍にまたがって、飛び去って行ったのだった。

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唐・牛僧孺「幽怪録」より。この老人たちは仙山やらみかんの中やらで、長く長く生きているのでしょう。

本日は天長節。天のごとくとこしえに長く、地のごとく久しからんことを。いやさか。

 

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