平成26年9月24日(水)  目次へ  前回に戻る

今日も問題は深まるばかり。いや、広がりもしたか。

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まだお彼岸の時節というのに、秋はどんどん深まってまいりました。

水国秋風夜、  水国、秋風の夜、

殊非遠別時。  ことに遠別の時にあらず。

水辺のこの町、秋風の吹く夜は、

特に遠く行くひとと別れるのにふさわしい時節ではないように思う。

このうたは、チュウゴク文学史上でも屈指なぐらい、かなりアタマの逝ってしまっているこの詩人が、長江下流域の水郷地帯で、陸判官というひとと別れの宴を張ったときの五言絶句です。陸判官というひとはどんな人かよくわかりませんが、このひとは長江の下流域から上流にある巫峡附近の琵琶峡というところに赴くことになったらしい。

長安如夢裏、  長安、夢裏の如く、

何日是帰期。  いずれの日かこれ帰る期(とき)ならん。

むかしあなたと長安ではじめて出会ったが、あのころはもう夢の中の世界のようだ。

いつになったらわれらはあの地に帰れることだろうか。

以上。

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五言絶句なので、かなりの余韻を残して終わります。陸判官の生平も、詩の作られた背景もあまりよくわからないので、それが余韻を増幅してビンビンになりますね。

ちなみに作者は唐・李白、「送陸判官往琵琶峡」(陸判官の琵琶峡に往くを送る)

「長安」を「那覇」とか「沖縄」に読み替えてくださると、わたくしの意にもぴったしい。明日、沖縄に帰る人を送る会があるんです。しかしちょっと出席できなさそう。でもでもでも、

 さみしいものか

 いづれおれも近く

 この愛する大地と別れるのだ。

 こころよい風と光と やさしい眼ざしと声々とに (西条八十「犬を呉れる」より)

 

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