平成26年2月16日(日)  目次へ  前回に戻る

 

積雪で山梨にトラックが入れないので、食糧不足になっているみたいです。ちょっと深刻みたいだが。

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寒いの忘れるために、暖かい地方の話をするよ。

「球陽竹枝詞」より。標題は、「沖縄地方に関する、男女のことに絡んだ民謡風のうた」の意。

その三

繊繊指細玉抽芽、  繊繊たる指細くして玉の芽を抽き、

三五初交点点瑕。  三五初交す点点の瑕。

檣上空憐小垂手、  檣上に空しく憐れむ、小垂手の

廻風如巻落梅花。  廻風の落梅花を巻く如きを。

うへへ、かよわい指は細くて、白い玉(←手の比喩)から芽が出てきたようじゃ。

おお、その美しい手に、十五の歳から、点々とキズをつけるのだそうじゃのう。

船の上からにやにやしながら見つめていた、小さなお手手につけた入墨が、

風に吹かれて巻き上がる梅の落花のように動いているのを。

これは、

女十五黥手指背墨点、如梅花。

女十五にして、手指の背に墨点を鯨し、梅花の如し。

女性は十五歳になると、手の甲や指の背に点々と入れ墨を施す。その模様は梅の花のようじゃ。

という、南島地方の「針突」(はぢち)風俗をうたっているようです。

チュウゴク大陸から来てハヂチを見ると、少しエキゾチックでどきどきはしますが、東洋文明の精華ともいうべき「纏足」ほど興奮しませんね。

その五

海光晴漾碧天雲、  海光晴漾として碧天に雲あり、

三五龍姑自作群。  三五の龍姑、おのずから群を作す。

石筍崖辺朝不動、  石筍崖辺、不動に朝し、

雪崎洞裏拝龍君。  雪崎洞裏に龍君を拝す。

 海はぴかぴか晴れてきらきら、青い空には雲がぽっかり。

 ぷりぷりした龍女たちは三月五月に、好き勝手に群れをなし、

 石筍崖(鍾乳洞のある海崖)のあたりで不動尊にお詣り、

 雪崎の洞穴の中で海竜王(うんじゃみー)を拝む。

これは解説が無いとわからんぞ。

実は、この詞は那覇の「波上山」(現在、波上宮のあるところ)のことを詠っているのである。

波上山一名石筍崖、寺中有神手剣而立名、不動波上山。東有小山名雪崎、下有洞。正三五九月謂之吉月、女子相約拝洞以為常。

波上山は一に石筍崖と名づけ、寺中に神手の剣ありて名を「不動波上山」と立つ。東に小山有りて雪崎と名づけ、下に洞有り。正・三・五・九月はこれを「吉月」と謂い、女子あい約して洞を拝むを以て常と為せり。

波上山は別名を「石筍の海崖」ともいうが、寺院があって、むかし神が自ら製したという剣を蔵している。このため、剣を持つ不動尊が祀られ、山名も「不動波上山」というのである。ここから東の方に、小さな丘があって、ここは「雪崎」と呼ばれ、その丘の麓には洞穴がある。正月・三月・五月・九月の四か月は「吉月」とされ、女性たちが群れつどってこの洞穴の中に祀られる竜王を拝みにくるのである。

波上宮のこと、その神剣のことなどは「琉球国由来記」等を見ればより詳しい・・・のですが、残念ながら、今日はここまで。寒いし、明日会社なので。(T_T)

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「球陽竹枝詞」は徐葆光「海舶集」中集に所収。徐葆光は清のひと、康熙五十八年(1719)、尚敬王の冊封副使として来琉。蔡温をはじめ琉球首里王府の名だたる文人ど詩の応酬があるが、作詩の事情や対象物について詳細に解説をつけてくれているので、当時の沖縄の地理・風俗が垣間見れて非常におもしろいのである。

 

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