平成24年8月3日(金)  目次へ  前回に戻る

 

昨日は仮面の重みのせいか頭痛がひどくて更新できず。やっと週末。もっと休みたい。

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智岩禅師は唐のはじめ、江蘇・丹陽のひと。俗姓を華といい、はじめ軍人としてしきりに功をあげ、四十歳にして郎将(一佐ぐらいのイメージであろうか)の地位にまで昇進し、華郎将と呼ばれていたが、突然出家し、牛頭法融にしたがって、その法を嗣いだひとである。

出家して山中に籠ったころ、ともに従軍していた部下二人がこれを訪ね、連れ戻そうとしたことがあった。

山中あちこち尋ね歩いて、髪もヒゲも剃らずに修行している姿をついに発見し、声をかけて言う、

郎将狂邪、何為住此。

郎将狂えるや、何すれぞここに住する。

「郎将どの、狂気の沙汰ではござらぬか。なぜあなたがこんなところに籠っておられるのだ」

すると、智岩答えていう、

我狂欲醒、君狂正発。

我が狂は醒めんとするも、君が狂は正に発す。

そのとおり、わしは狂気であった。しかし、わしは狂気から今覚めようとしているところじゃ。おまえらの方こそ狂気の発作を起こしているのではないか。

夫嗜色淫声、貪栄冒寵、流転生死、何由自出。

それ、色を嗜み声に淫し、栄を貪り寵を冒して、生死に流転し何によりてか自出せん。

ああ、目に見えるものを楽しみ、耳に聞こえるものを悦び、現世での栄光を求めお偉方にお仕えする。そのようなままでは、輪廻生死の世界からどうやって脱け出すことができようか。

その言葉に二人の部下も大いに感ずるところがあり、智岩を連れ戻すことを止めて山を下ったということである。

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「五灯会元」巻二より。わしはもう狂気からほぼ醒めた。みなさんはまだかな? 

 

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