令和2年2月1日(土)  目次へ  前回に戻る

「悪の限りを尽くすでぶー」「ぴよー」「ぴよー」と気勢を上げるぶたデビル、ひよこデビルたちだ。彼らの腹の中には悪の心でいっぱいなのである。

今週はもう出奔の元気も無し。不安と絶望の日々であるが、今日は35年前に同じカマの飯食ったひとと飯食った。

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いやー、楽しかったんで、食った食った。腹苦しい。ああ、ぽんぽん。

清の末、曽国藩のもとで太平天国の乱の鎮圧に活躍し、その後中央アジアの回教諸侯を討伐して、「新疆」の地を定めた名将・左宗棠(さ・そうとう。1812〜85)は、清濁併吞の大人物ですが、たいへん肥満していた。

甘粛省で中央アジア経略に従事していたとき、

一日値盛夏、解衣臥便榻上、自摩其腹。

一日盛夏に値(あ)い、解衣して便榻上に臥して、自らその腹を摩せり。

夏のある日、たいへんな酷暑で、服を脱いで簡易ベッドに転がって、「ああ、ぽんぽん」と自分の腹をさすり撫でていた。

一材官侍側、公顧之曰、爾知此腹中所貯何物。

一材官侍側するに、公これを顧みて曰く、「爾この腹中に貯うるところ何物と知るや」と。

「材」は「才」と同じで、「材官」は優秀な補佐官の意。

気の利いた補佐官が側に控えていたのを、左宗棠公は顧みて、「おまえ、この腹の中に何が貯えられているか、知っておるか」と訊いた。

「はあ?」

でもさすがに優秀なやつで、即座に、

対曰、皆燕窠、魚翅也。

対して曰く、「皆、燕窠、魚翅ならん」と。

「すべてツバメの巣やふかひれ(といった高級料理)が詰まっているのでございましょう」

と答えた。

公笑叱曰、悪、是何言。

公、笑い叱して曰く、「悪、これ何をか言う」と。

左公は笑いながら叱りつけた。

「こら、何を言うんじゃ」

然則鴨子、火腿耳。

然らばすなわち鴨子、火腿ならんのみ。

「それなら、(ちょっとB級食品の)カモのタマゴか炙りもも肉でございましょう」

「わははは」

公乃大笑而起曰、爾不知此中皆絶大経綸耶。

公すなわち大笑して起ちて曰く、「爾知らずや、この中みな絶大の経綸なるを」と。

左公は大笑いしながら起き上がり、言った。

「おまえは知らんのか、この腹の中には(中央アジアを治めようという)超巨大な政略(「経綸」=チンリン)の案が入っておるんじゃよ」

「そうでしたか、絶大チンリンですか」

引き下がって来た補佐官は、同僚たちに告げて言った、

何等金輪、能呑諸腹中。況又為絶大者耶。

何等の金輪ぞ、よくこれを腹中に呑む。いわんやまた絶大者たるをや。

「金輪」=黄金製の輪も「チンリン」になります。

どれぐらいの大きさの黄金の輪なら、おまえら腹の中に呑み込める? あのひとが呑み込んだのは、超巨大なやつなんだそうだぞ」

聞者咸捧腹。

聞く者、みな捧腹す。

聞いた同僚たちは、みんな腹を抱えて大笑いした。

いろいろ金目のウワサも絶えないひとであったのである。

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清・孫静安「栖霞閣野乗」巻上より。「清代野史叢書」全十巻(北京古籍出版社1994)がばら売り一冊400円で売ってたので、二冊買ってきました。おカネがあったら全部買いたいところだが。左宗棠の幕僚のみなさんは明るくていいですね。今日は土曜日なのでわしも少々は明るいんです。だが明日はもう日曜日か・・・。

 

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