令和元年10月22日(火)  目次へ  前回に戻る

じゃがおやじに雇用されても労働をほぼ提供しようとしないぶた農業労働者だ。労働と資本が何やらしてかんやらして価値を生み出すとは誰が言ったのであったろうか。もしかしたら「労働しないこと」が価値を生み出すような気もしたりするのである。

朝のうちは雨が強かったんですが、正殿の儀の時間には都内は晴れて、皇居の空に虹がかかったという。わたしは別の地で調査中でしたが・・・。本心からこの国の象徴は「ありがたいもの」だと思います。

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古代チャイナでありがたい貴重なモノといえば、宝玉と黄金と真珠であったが、

玉起于禺氏、金起于汝漢、珠起于赤野。

玉は禺氏(ぐうし)に起こり、金は汝・漢に起こり、珠は赤野に起こる。

宝玉は西方の禺氏の支配する山岳地帯からもたらされる。黄金は南方の汝水・漢水の流域からもたらされる。真珠は南の果て、すべてが燃えるような荒涼たる赤野の地からもたらされるのだ。

ここに古代の賢王たちの知恵があるのである。これらの産地は、

東西南北距周七千八百里。水絶壌断、舟車不能通。

東西南北、周を距(へだ)つこと七千八百里なり。水絶え壌断ち、舟車通ずるあたわず。

東西南北に、周の国から7,800里離れている。水系は連続せず、山々に遮られ、舟も車も通じていない。

「7,800里」というのはいい加減な数字を挙げているのだと思いますが、一応古代の一里は410メートル弱、とされますので、3,200キロ弱、という距離になります。春秋期の辺境と辺境の間の距離としてはなかなかいい数字ですね。

先王為其途之遠、其至之難、故託用於其重。

先王はその途の遠く、その至るの難きがために、故に用をその重きに託せるなり。

古代の賢王たちは、産地までの道のりが遠く、もたらされることが難しい、まさにそのことを以て、これらのモノを貴重なモノとして扱ったのである。

それはどういうことであろうか。

この中では、

以珠玉為上幣、以黄金為中幣、以刀布為下幣。三幣握之則非有補於煖也。食之則非有補於飽也。先王以守財物、以御民事、而平天下也。

球・玉を以て上幣と為し、黄金を以て中幣と為し、刀布を以て下幣と為す。三幣はこれを握るも煖に補するあるあらざるなり。これを食らうも飽に補するあらざるなり。先王以て財物を守り、以て民事を御し、而して天下平ぐ。

真珠と宝玉が(最も手に入りにくいので)最上の通貨とした。次に黄金を第二位の通貨とした。(中原においても手に入る銅で作られた)刀とか布といわれる貨幣を、最下位の通貨としたのである。これらは手に握ると暖がとれるというわけではないし、食べることができて腹がふくらむというものでもない。古代の賢王たちは、(このような役に立たないモノを貴重なモノとすることによって、交易により)役に立つモノが流通するようにし、人民たちの生活が成り立つようにコントロールして、天下を平穏に治めたのである。

「刀」は斉など黄河下流域、「布」は黄河中流から長江中流の国々が春秋から戦国時代に作った「銅貨」の通称です。

考えてもみてください。もしも役に立つモノを貴重なモノとしてしまったらどうなりますか?

今、人君藉求於民、令曰十日而具、則財物之賈什去一。

今、人君、民に藉求(せききゅう)して、令して、「十日にして具せよ」と曰わば、財物の賈は什に一を去らん。

もしもゲンダイ(紀元前7世紀ごろ、という設定です。実際はおそらく前3世紀〜前2世紀だったんではないかと思いますが)において、君主が人民から後払いで物資を集めたいと思い、「十日以内に持ってこい」と命じたとすると、国内でそれを扱っている商人は、十人に一人は逃げ去ってしまうことでしょう。

令曰八日而具、則財物之賈什去二。令曰五日而具、則財物之賈什去半。朝令而夕具、則財物之賈什去九。先王知其然、故不求於万民、而藉於号令也。

令して「八日にして具せよ」と曰わば、財物の賈は什に二を去らん。令して「五日にして具せよ」と曰わば、財物の賈は什に半ばを去らん。朝たに令して夕べに具せしめんとすれば、財物の賈は什に九を去らん。先王その然るを知る、故に万民に求めずして号令に藉するなり。

「八日以内に持ってこい」と命じたとすると、それを扱う商人は十人に二人は逃げ去ってしまうことであろう。「五日以内に持ってこい」と命じたとすると、商人は十人のうち半分は逃げ去ってしまうことであろう。朝に「夕方までに持ってこい」と命じたとすると、商人は十人のうち九人まで逃げ去ってしまうであろう。(たいせつな物資が流通しなくなってしまうのだ。)古代の賢王たちはそうなることを予測していたので、人民すべての物資を(貴重品として)集めるのではなく、(遠い辺境の民に)命令(して集めること)をその代わりとしたのである。

昔のひとは知恵があったんだなあ。

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「管子」国蓄第七十三より。なるほど、おえら方が(普通のみなさんも)、競っておカネを欲しがるのはこういうことだったんだなあ。おカネはそれを手に握っても暖まらず、食べることもできない役に立たないモノですが、それを欲しがることで、ほんとうに大切なモノを独占してしまわないようにしていたわけなんですね。勉強になってありがたい。明日休みだともっとありがたいのだが、また明日が来るのだ・・・。

 

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