令和元年8月14日(水)  目次へ  前回に戻る

ざしきわしは福の神なのでわらしー。

それはすばらしいでカッパ。

黙っていてもカネもうけできるかもナー。

「喜びのために色づいたのでカッパー!」

連行途中で肝冷斎が脱走し、また会社に行かずにどこかに行ってしまったようである。けしからん。

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けしからん、といいますと、元の時代のことですが、浙江・松江府の青村で、

「あれはなんだ?」

とひとびとが指さす先に、

空中有葦一枝在前、継有鈔随而飛之。

空中に葦一枝前に在る有りて、継いで鈔のこれに随いて飛ぶ有り。

空を、まず葦の茎が一本飛んで、その後を(政府の発行した)紙幣が追いかけて飛んできたことがあった。

村中見者皆焚香有乞降之意、竟墜于林清之之家。

村中の見者、みな香を焚きて乞降の意有るも、ついに林清之の家に墜つ。

村中のこれを見た者は、みなお香を焚いて「我が家に落ちてきてください」と祈ったのだが、結局、林清之というひとの家に落ちた。

この事件は、後至元丁丑(ひのとうし)年のことだそうですから、西暦だと1337年の事件ということになります。

其家迄今温飽。

その家、今にいたるまで温飽なり。

その家は、現在(元末。1370年ごろ)に至るまで、裕福に暮らしている。

けしからん。

ところで、「幽冥録」によれば、六朝時代にも、

海陵黄鄩先貧、風雨中飛銭至其家。

海陵の黄鄩(こうじん)先に貧しきに、風雨中に飛銭その家に至る。

海陵の黄鄩はそのころまで貧乏であったが、ある日、風雨の中、銭がその家に飛んで来た。

触園籬、誤落無数、余処皆拾得、後富至十万、擅名江北。

園籬に触れて誤まちて落つること無数、余はみな拾得するところとなり、後、富十万に至りて名を江北に擅(ほしいまま)にせり。

庭の垣根に当たって、そこに落ちてしまったものも数えきれなくあったが、それ以外は(家に入ってきたので)すべて拾得することができ、(これを元手に)後には十万億円も保有する大富豪になって、長江の北で、並ぶ者もないほどになった。

ということがあった(→このはなし)のだそうなので、

以此観之、誠有此事。

これを以てこれを観るに、誠にこの事有るなり。

その歴史的事件と今回の事件とを比べてみるに、確かにこういうことはありうるのだということが判明する。

時代の変化に伴ったのでしょう、銭と紙幣との違いがありますが、座したままカネが儲かるとはどちらもけしからん。しかしこういうことが確かにある、ということが確認できたのだから、これからは座して待つことにしたいと思います。

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「山居新語」より。よーく考えてみると、銭が大量に飛んでくるのは不思議なのですが、紙幣なんだから風に乗って飛んできても自然現象的には何の不思議も無いような気がしてきました。もしかしたらこれはかなりの確率で起こることだぞ。宝くじ当たるよりも起こりやすいかも。

 

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