平成31年4月16日(火)  目次へ  前回に戻る

「ウインナーが欲しいであろう。じゃが、やらないでぶー」という専制君主ぶたキングである。同じ専制君主でも史上稀に見る名君というべき(とされる)乾隆帝の爪の垢でも煎じて飲むべきであるが、腹の足しになるなら喜んで飲むであろう。

これまでの総労働時間のうち、ほんとに社会に役に立つことをした時間をホントの労働時間と考えると、あんまりシゴトしていないような気がしてきます。最近は全くしていない、ような気もしますカモ。しかし、社会には役に立っているひともいるのである。

・・・・・・・・・・・・・・・・

乾隆二年(1737)、雲南巡撫であった張允随が上書して曰く、

州県牧令熟諳農功者少。請定十則規条。

州県の牧令、農功を熟諳する者少なし。請う、十則の規条を定めんことを。

地方の長官には、農業労働について詳しく記憶している者はあまりおりません。そこで、農業労働について目指すべきことを十条に整理した条目を定めてはいかがかと存じます。

と。

十条とは何ぞや。

1.筋力勤健 ・・・ 筋肉の力を強くし、いつも健康に農業労働に勤しむことができるようにすること。

2.婦子協力 ・・・ 家族睦まじくして、女房子どもに農業労働を手伝わせること。

3.耕牛肥壮 ・・・ 耕作に用いるウシはよくかわいがって、太って力強く養うこと。

4.農器充鋭 ・・・ 農具は充実し、よく手入れしておくこと。

5.耘耔精良 ・・・ 耘(ウン)・耔(シ)、すなわち、農地をくさぎり培うことを丹精込めてやっておくこと。

6.相土植宜 ・・・ 土地の特徴をよく見定めて、適切な作物を植えること。

7.灌漑深透 ・・・ 用水路を整備し、水を田地の地中深くまで浸透するように十分に導くこと。

8.耘耨以時 ・・・ 耘・耨(ドウ)、すなわち、くさぎり、鍬入れを適切な時期に行うこと。

9.糞壅寛裕 ・・・ 畔への泥塗りは余裕を以て厚めに行うこと。

10.  場圃潔治 ・・・ 田畑や農作業場は、整理整頓しておくこと。

なんだそうです。

以十得八九者爲上農、即於上農内選老成謹厚之人専司教導。

十に八九を得る者を以て上農と為し、即ち上農の内より老成謹厚の人を選びて専ら教導を司さどらしむ。

十項目のうち、八か九以上できたひとを「上級農業者」と認定し、その上級農業者の中から、さらに老成して謹厳で人間性も厚いひとを選んで、他の農業者の指導に専任させることとしてはどうでしょうか。

という提案で、これは、

内称。

内に称せらる。

皇帝によって称揚され、認可された。

そうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

清・趙慎畛「楡巣雑識」上巻より。こういう上農の方こそ世の中の役に立っておられるのであろう。定めによれば、こうして農業労働を指導させた上で、毎年、秋の収穫の後、

州県査所管郷村、如果地闢民勤、穀豊物阜、觴以酒醴、給以花紅、導以鼓楽、以示奨励。

州県、所管の郷村を査し、もし果たして地闢(ひらか)れ民勤しみ、穀豊かにして物阜(おお)ければ、酒醴を以て觴し、花紅を以て給い、鼓楽を以て導き、以て奨励を示す。

州県のお役所では、管轄の村々の出来を調べ、しかるべく開墾地が増え、人民たちがマジメに働き、穀物豊かにして作物多い、と認定されれば、お酒や甘酒を寄進して宴を開かせ、花や化粧の材料を給付して舞踊をさせ、太鼓を鳴らして人々を集め、その村を表彰して励ます。

こととされていた。そのときの当該村落の上農のひとたちの得意を思えば、まことに意義ある職業人生といえるであろう。

 

次へ