平成31年3月5日(火)  目次へ  前回に戻る

久しぶりで登場したぶたイヌ。ぶたとのよりは優秀である。

イヌにはシゴトをするやつもいるので、洞穴の中にいてサボっているやつよりずっと役に立つのでわんわん。

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南宋の宝慶年間(1225〜27)の初め、のことです。

当国者欲攻去真西山、魏鶴山、朝士莫有任責。

当国者、真西山・魏鶴山を攻去せんと欲するも、朝士責に任ずる有るなし。

権力中枢は、(儒学者であり正論を述べて人気にあった)真西山先生と魏鶴山先生を攻撃して辞職させようと考えたが、朝廷の士大夫たちはその手先になって弾劾する役を引き受けようとしなかった。

このとき、梁成大というやつが、

欣然願当之、遂除察院、撃搏無遺力。

欣然としてこれに当たらんことを願い、遂に察院に除せられ、撃搏して遺力無し。

大喜びしてそのシゴトをやりたいと願い出て、監察院に任命され、二人をのこす力も無いほど猛攻したのであった。

これに対して、世論の中心である太学の生員たちは激高し、落書して

大字榜宜添一点、曰梁成犬。

大字の榜、一点を添えて「梁成犬」と曰うべし。

―――梁成大さん、「大」の字の肩に点を一つ添えてあげましょう。あなたの名前は「梁成犬」だ。

と。

だが、わしは反論した。

犬之狺狺、不過吠非其主耳。是有功於主也。

犬の狺狺(ぎんぎん)たる、その主にあらざるに吠ゆるに過ぎざるのみ。これ、主に功有るなり。

イヌはぎゃんぎゃん吠えるといっても、それは自分のご主人以外の者に向かって吠えるだけではないか。ご主人には役に立っているのである。

ところが、

今不肖之台諫、受権貴之指呼、納豪富之賄賂、内則剪天子之羽翼、外則奪百姓之父母。是有害於主也。吾意犬亦羞与為伍矣。

今、不肖の台諫の権貴の指呼を受け、豪富の賄賂を納め、内はすなわち天子の羽翼を剪り、外はすなわち百姓の父母を奪う。これ、主に害有るなり。吾意(おも)うに、犬もまたともに伍と為すを羞じん。

今起こっていることは、バカな監察官が、権力を持つ身分の高い方々のお指図を受け容れ、あるいは勢力のある財産家からの贈賄を受け取り、朝廷の中では、皇帝の羽翼ともいうべき重臣たちを追放し、外では人民たちを守護する優秀な地方官たちをクビにしているのだ。これは、御主人(である皇帝)に害をなしているのだから、わしは思うに、イヌだってこいつらと一緒にされたら恥ずかしくてしかたないのではないだろうか。

「よし!」「そうだ!」「よう言うた」「わははは」「がははは」・・・・

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宋・羅大経「鶴林玉露」より。しかし、実際はこの後、当局者への激しい批判によって返り咲いた真西山や魏鶴山などの正論派によって、外交も政策も硬直してしまい、南宋はその命脈を短くした一面もございます。やはり世間様から離れて、洞穴の中で暮らしているのが一番いいなあ。そういえば今日はまた、「先週も洞穴から野球観戦に行ってご苦労ささまじゃのう」と岡本全勝さんほめられたみたいです。

 

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