平成30年11月5日(月)  目次へ  前回に戻る

「おかわり自由」のサービスを逆手に、無制限に食べる。ぶたとのの権力欲は飽くことを知らない。これに匹敵しうるのは巨大ニワトリしかないのか。

月曜日でした。感情なし。動こうとするキモチも無し。

・・・・・・・・・・・・・・・

戦国の時代のことでございます。

魯丹三説中山之君、而不受也。

魯丹みたび中山の君に説くも、受けられず。

魯丹という説客が、中山国の君主に三回政策を説明したが、受容されなかった。

「ふーむ」

魯丹は考えて、

散五十金事其左右。

五十金を散じてその左右に事(つか)う。

金貨五十枚をばらまいて、王の側近たちに賄賂を贈ってみた。

そして、

復見未語、而君与之食。

また見(あ)いていまだ語らざるに、君はこれに食を与えたり。

再び中山君に面会を求めたが、その席では特に何の発言もしなかった。それなのに、中山君は、魯丹にご飯を出させて厚遇した。

普段はご飯無しだったのに、このときは一緒にご飯を食べるという厚遇をしたのです。

魯丹はご飯を食べ終えて宮殿を出てくると、

「これはいかん、いかんぞ!」

と大慌てで、

不反舎、遂去中山。

舎に反らず、遂に中山を去る。

宿舎にも寄らずに、すぐに中山国から退出しようとした。

「はやく、はやく国境を出るのじゃ!」

其御曰及見之始善我、何故去之。

その御、曰く、これに見(あ)うに及んで始めて我に善くせるに、何故ぞこれを去る。

馬車の御者が訊ねた。

「先ほどの御面会は、はじめて先生に対して厚遇をしてくれました。(五十枚に金貨をばらまいた結果が出たのでございましょう。)それなのに、どうして急いでここを去ろうとされるのですか」

魯丹は、恐怖でびくびくしながら答えた。

夫以人言善我、必以人言罪我。

それ人言を以て我に善くす、必ず人言を以て我を罪せん。

「ああ、側近の者たちのコトバによってわしを厚遇したのだ、次は絶対に誰かのコトバによってわしを罪しようとするであろう」

そして御者に命じた、

「はやく、はやく国境を出るのじゃ!」

そのころ、中山君のもとには公子さまが面会を求めておられました。

「父上、魯丹という者、側近どもにずいぶん金貨をばらまいたようでございますぞ。おそらく彼は

爲趙来間。

趙のために来たりて間す。

趙の国が遣わしてきたスパイではないか、と思われます」

「なんと」

そこですぐに調べさせると、すでに国境に向けて出発した後だ、という。

「なんじゃと!」

「ああ、やはり、言わんことではない」

中山君は兵を発してその後を追わせたのであった。さて魯丹の運命や如何。

・・・・・・・・・・・・・・・

「韓非子」巻七・説林上より。ごはんを食べさせられたら危ないんです。気をつけましょう。

ちなみに「韓非子」によりますと、魯丹は逃げきれずに捕らえられて殺されたらしいのでございます。このレベルの賢者でもやられてしまうのだ。君主なるもの(すなわち権力の所在)に近づき献策することの難しさが伝わってまいりますね。ああ恐ろしいなあ。わたしどもはやる気無しなので大丈夫ですが、みなさんが心配だなあ。

 

次へ