平成30年3月11日(日)  目次へ  前回に戻る

肥ったやつはもちろん、あんまり動きのよくないやつの出番は、だんだん無くなっているようである。

東日本震災から七年目の3月11日になりました。連続して考えると毎日毎日同じような生活送ってますが、七年前を思い出すと、いろんなことがずいぶん変わったなあ、とため息つかされます。

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李白は生前から、謫仙人(天上から地上に流謫されてきた仙人)である、とひとにも言われ、自分でも言っていました。

あるとき、

玄宗燕諸学士於便殿。

玄宗、諸学士を便殿において燕す。

「燕」は「宴」と同じ。

玄宗皇帝が、学者文人たちを集めて宮中で宴会を開いた。

宴たけなわのころ、皇帝はまわりと臣下を信頼することについて会話をしていたが、ふと

顧李白曰、朕与天后任人如何。

李白を顧みて曰く、「朕と天后と、人に任すること如何」。

李白の方を見ておっしゃった。

「わしと天上の天帝さまとを比べると、部下を信頼してシゴトを任せる、という点ではどんなところが違うかな」

「そんなこと知るか」

とは言いません。

李白答えて曰く、

天后任人、如小児市瓜、不択香味、唯取其肥大者。

天后の人に任するは、小児の瓜を市(か)うがごとく、香味を択ばず、ただその肥大なるものを取るのみ。

「天帝さまが部下にシゴトを任せるときは、コドモが市場に行って瓜を買うときとおんなじなんです。香がいいとか味がいいとかそういうことはお構いなしで、ただまるまるとでかいやつを選んで任せるんです」

天帝さまはでぶを信頼しているようです。

陛下任人、如淘沙取金、剖石採玉、皆得其精粋。

陛下の人に任するは、沙を淘(よな)ぎて金を取り、石を剖きて玉を採るがごとく、みなその精粋を得るなり。

「陛下が部下にシゴトを任せるときは、砂を掬って水中の網の中で揺らがせて砂金を探し、あるいは石を割って中から玉を取り出すように、よくできたやつを選んで、そいつにやらせるというやり方ですね」

「わはははは」

上大笑曰、学士過有所飾。

上大笑し、曰く、学士過ぎて飾るところ有り、と。

皇帝は大笑いされた上で、

「李学士どのはちょっとうまいこと言いすぎじゃのう」

とおっしゃった。

んだそうです。

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「開元天宝遺事」巻下より(「唐語林」巻三所収)。天上はともかく地上は適材適所だから、肥ったモノにはシゴトが無いのが普通である。

 

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