平成30年1月1日(月)  目次へ  前回に戻る

きんがしんわん。

謹んで新年の慶びを申し上げます。本年もよろしかったらお願いいたします。

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新しい春となりました。雪降ったり雨降ったりしている地方もあると思いますが、八百五十一年前の湖南地方、朝は雨降ってたらしいんです。しかし、

嫩水春来別様光、 嫩水春来たりて別様の光あり、

草芽緑甚却成黄。 草芽緑甚だしく却って黄と成る。

 やわらかな水も、新らしい春が来たので昨日までちがうさまに輝いており、

 草の芽もみどりが色濃くなったような気がして、なんだか赤っぽい。

夕方になって天気よくなってきたんで、散歩に出た。

東風似与行人便、 東風は行人の便に与(くみ)せんとするに似て、

吹尽寒雲放夕陽。 寒雲を吹き尽くして夕陽を放ちぬ。

 東向きの(春の)風は行く人(おいら)の便宜に配慮してくれたのであろうか、

 寒い雲を吹き払いつくして、夕陽を輝かせているのである。

あたたかいようです。

もう一首作った。

急下柴車踏晩晴、 急に柴車を下りて晩晴に踏めば、

青鞋歩歩有沙声。 青鞋(せいあ)歩々に沙声有り。

 思いついて、乗っていた小さな車を降りて、よく晴れた夕暮れに歩いてみると、

 青いくつが一歩一歩に、砂を踏む音を立てる。

忽逢野沼無人処、 忽ち野沼に逢う、人の無きところ、

両鴨浮沈最眼明。 両鴨浮沈する、最も眼に明らかなり。

 突然、野原の沼のほとりに出た。誰もいない。

 二羽のカモが浮いたり沈んだりしているのが、(夕陽の中)おれの目に一番はっきり見えたぜ。

なんやねん。

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南宋・楊誠斎「丁亥正月新晴晩歩」(丁亥の年、正月、雨上がりの夕方に散歩した)二首。丁亥年は乾道三年(1167)。のどかな新春の夕べどきでした。でも実は旧暦の正月ですから、季節感かなり違います。ほんとうの春が来るまでまだ一か月以上かかるんです。まだ耐えなければならぬのだ。

 

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