平成28年10月15日(土)  目次へ  前回に戻る

おいらはぶたドラマー。毎日遊んで暮らすのさ。

今日は休みだからであろう、足冷斎から「会社行くの交代してくだちゃい」の泣き言は来ません。ずっと休みだとみんなしあわせなのだなあ。

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唐の文宗のとき、姚勖(よう・きょく)という人がおりまして、これにある疑獄事件を裁かせたところ、次々と関係者に白状させて決着をつけたことがあった。

そこで、文宗皇帝は

以爲能、擇職方員外郎。

以て能と為して、職方員外郎に択ぶ。

「こいつは有能だぞ」と思って、職方の員外郎に選任しようとした。

「職方」司は隋唐の兵部四司の一で、軍の地図・情報を司った官庁です。職方司には部長である「郎中」とそれを補佐する「員外郎」を置く、とされていましたので、この副部長に当たる員外郎に就けようとしたのですな。

すると、右丞相の韋温がこれに反対した。

郎官清選、不可賞能吏。

郎官は清選せらるべく、能吏を賞するべからず。

「郎官クラスは利害を超越した清廉な人物を充てるものでございます。その職に、有能だからといって小賢しい者を就けてはなりません」

というのである。

「なるほど、理屈はそんな感じがするな」

と皇帝は何となく納得しまして、韋温に

問故。

故を問う。

「先例はどうなっているのか」と訊ねた。

「もちろん先例はございま・・・」

「お待ちください」

横合いから吏部右丞の楊嗣復が答えて曰く、

勖、名臣後。

勖は名臣の後なり。

「姚勖は現在の身分は低うございますが、玄宗皇帝の開元の治を補佐した大臣・姚崇の子孫でございます。

そして、

治行無疵。

行を治めて疵無し。

その行いは自制に富んだもので、特に悪いことはしておりません。

そのような者を

若吏才幹而不入清選、他日孰肯当劇事者。此衰晋風、不可以法。

もし吏才の幹にして清選に入れざれば、他日たれかあえて劇事に当たる者ならん。これ衰晋の風にして以て法とするべからず。

もし、細かいことに有能だから、という理由で清廉な人物と評価しない、などということになったら、今後は誰が(今回の決獄のような)面倒なシゴトをしてくれるでしょうか。有能な者を清廉でないとするのは、六朝の晋が衰えたころに先例がたくさんございます。こんな例に倣ってはなりませぬ」

「なるほど、そういう先例ではダメだな」

皇帝は納得されまして、姚勖を抜擢することに決まったのでございます。

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宋・王讜「唐語林」巻六より。唐末の守旧派と進士派の党争が背景にあるのでございますが、それはそれとしまして「衰晋の風」はスバラしい。「有能だと出世しない」というのである。そんなことをすれば、楊嗣復が言うとおり、誰もシゴトをしなくなります。誰もシゴトをしなければ、われわれもシゴトをさせられないわけですから、スバラしい。

 

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