平成27年12月29日(火)  目次へ  前回に戻る

鳶は飛び魚は躍る(「詩経」)。生き物はみな自分の居るべきところに居るのだ。なぜニンゲンは・・・

肝冷斎で一服しております。ずずずー(←お茶を啜る音)。

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ある人言う、

斎欲深。

斎は深きを欲す。

書斎は人家から奥深く離れている方がよい。

―――まったくですな。ずずずー。

檻欲曲、樹欲疎、蘿薛欲青垂。

檻は曲なるを欲し、樹は疎らなるを欲し、蘿薛(らせつ)は青く垂るるを欲す。

おばしまはグニャグニャしている方がよく、木々はあんまり繁茂していない方がよく、ツタカズラが青く垂れさがっているのがよろしい。

部屋の中は、

几席欄干窗竇欲浄如秋水。

几席、欄干、窗竇は浄にして秋水のごときを欲す。

机・座席、欄干、窓・小窓は清潔で、秋の流れのようであってほしい。

―――ほい。

榻上欲有烟雲気。

榻上、烟雲の気有らんことを欲す。

ベッドの上には、もやや霞みみたいなふわふわした気分があるといい。

墨池筆牀欲時泛花香。

墨池・筆牀、時に花香を泛べんことを欲す。

すずりの墨溜めや筆架けには、ときおり芳しい花を浮かべてみよう。

―――なるほどね。ずずずー。

読書得此護持、万巻尽生歓喜、嫏嬛仙洞、不足羨矣。

書を読むにこの護持を得れば、万巻ことごとく歓喜を生じ、嫏嬛(ろうけん)の仙洞も羨むに足らず。

「嫏嬛洞」というのは、古代よりのあらゆる書物が所蔵されているという伝説の洞窟。読書人の理想の地。

書斎で読書するときに、以上の助けがあれば、あらゆる書物がすべてよろこびあふれて(読む方も楽しく)、伝説の「嫏嬛洞」といえどもこれにはかなうまい、というように思いますよ。

―――らじゃー(了解)。

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明・呉従先「賞心楽事」五則(「明人小品集」所収)より。

お休みが続くとこころがいい感じになってまいります。呉先生に従う。

 

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