平成27年8月8日(土)  目次へ  前回に戻る

風の音にぞおどろかれぬる。

そろそろ朝晩は涼しくなってまいりました! もう夏も終わり、収穫の季節の前にしばらく休みたいものだが。

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晋の隆安年間(397〜401)のこと、浙江・呉興の地に

有人、年可二十、自号聖公、姓謝、死已百年。

人有り、年は二十ばかり、自ら聖公にして姓は謝、死してすでに百年なりと号す。

ある人が出現した。その人は二十歳ぐらいに見える容貌で、自ら

「わたしは聖なる人で、姓は謝であります。死んでからもう百年経ちます」

と称した。

そして、

忽詣陳氏宅、言是己旧宅、可見還、不爾焼汝。

忽ち陳氏の宅に詣(いた)り、言うに「これおのれの旧宅なり、還さるべし、しからずんば汝を焼かん」と。

突然、陳さんの家にやってきて、

「ここはわたしの生きていたときの家ですよ。返してくださいよ。そうしてくれないならあなたを焼きださないといけなくなる」

と言い出した。

陳氏は困惑したが、とりあえず追い返した。

と、数日後―――

火発蕩尽。

火発りて蕩尽す。

陳氏の家から火が出て、その家を焼きつくしてしまった。

人畜は早めに避難できて何の被害も無かったが、邸宅のあったところがまるまる焼野原になった。

そして火事の間にいったい誰がやりおおせたものか、

有鳥毛挿地繞宅周匝数重。

鳥毛の地に挿されて宅を繞りて周匝し、数重なるものあり。

宅地のまわりをぐるりと数周取り囲んで、鳥の羽毛が地面に挿されていたのである。

ナニモノかがここは自分の土地である、と明示したのであろう。

その後、謝聖公は二度とひとびとの前に姿を現さなかったが、

百姓乃起廟。

百姓すなわち廟を起こせり。

人民たちはお廟を立てて、聖公をお祀りすることにした。

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なんだそうです。南朝宋・劉敬叔「異苑」巻五より。

おいらも百年ぐらい休んでから戻って来ようかな。そのときはちゃんと返してくださいね、うっしっし。

 

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