平成26年6月25日(水)  目次へ  前回に戻る

 

カエルの声が聞こえてくる。ぎ、ぎ、ぎ、と何かを怨むような不気味な声が・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

カエルというのはシャツに貼り付いても生きていた平面ガエルのぴょん吉を引くまでもなく、たいへん生命力が強いもののようでございます。

唐のころ、河南・懐州に凝真観という道教のお寺がございましたが、このお寺の

東廊下柱已五十余年、道士往往聞蝦蟇声、不知的処。

東廊の下柱、すでに五十余年、道士往々にして蝦蟇の声を聞くも的処を知らず。

東側の回廊の床柱は、建てられてから五十数年経っていたが、道士がこのあたりを通り過ぎるとき、よくガマの鳴く声を耳にすることがあった。しかし、どこからその声がするのか、わからないのである。

歴代の道士たちの間で「不思議なこと」と言い伝えられてきていたのだった。

「学校の七不思議」みたいな感じでしょうか。

さて、ある年、

因柱朽壊、以他柱易之、斫之。

柱の朽壊せるに因り、他柱を以てこれに易(か)えんと、これを斫(き)る。

床柱が腐って破損してきたので、柱の木材を入れ替えることにし、柱を切り取った。

すると、

於柱中得一蝦蟇。

柱中において一蝦蟇を得たり。

柱の中から一匹のガマが出てきたのである。

工事に立ち会っていた道士たちは

「柱の中にどこから入ったのだ?」

と切り取った木材を検めてみたが、

其柱又無孔隙。

その柱、また孔隙無し。

その木材にはどこにも穴や隙間は無かった。

「ということは・・・・」

五十余年前にここの柱になるさらに以前、自然木のころに何かの拍子に木の幹に入り込んだガマが、そのままずっと生きていたのだとしか考えられなかった。

ガマは驚きあきれている道士たちの方をじろりと睨み据える(ように見えた・・・)と、ゆっくりとお堂の床下に消えて行った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

唐・著者不明「廣古今五行記」より(「太平御覧」巻949所収)。

うーん、それにしてもさっきからの「ぎ、ぎ、ぎ・・・」という不気味な声は、どこから聞こえるのであろうか。耳をすませてみると、押し入れの中から聞こえてきているようである。そういえば引っ越して来てから、この押入れはほとんど開けたことないんだよなあ。どれどれ中を見てみるか・・・(ガタガタ)・・・ん?・・・

うわあ!!!

 

表紙へ  次へ