平成26年4月24日(木)  目次へ  前回に戻る

 

やっと木曜日。あと一日。さきほど家に帰ってきましたが―――

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(その一)

南朝の宋の時代、元嘉年間(424〜453)のこと、李道豫という貴族が自宅に戻ったところ、

其家狗卧于当路。

その家の狗、当路に卧したり。

飼っているイヌが、通り道に寝ていた。

「じゃまだ」

豫、蹴之。

豫、これを蹴る。

李道豫は、イヌを蹴とばした。

すると、イヌ曰く、

汝即死、何以蹋我。

汝、即ち死せんに、何を以て我を蹋(ふ)むか。

「おいおい、おまえさんはもうすぐ死ぬのに、どうしてわしを蹴とばすんだ?」

道豫は呆然としてイヌを見つめたが、イヌは道豫の方をちらりと見ただけで、ゆっくりと門から出て行った。

その日から家人と話しているときもぼんやりするようになり、

未幾豫死。

いまだいくばくならずして、豫、死す。

しばらくもしないうちに、道豫は死んだ。

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(その二)

同じころのことだそうですが、東陽郡の令であった卞伯玉というひとが帰宅したとき、

竈正熾火、有鶏遥従口入。

竈、まさに火熾(さか)んなるに、鶏の遥として口より入る有り。

ちょうどカマドに火がさかんに燃えていたが、そのカマドの口に、一羽のニワトリがふらふらと入り込んで行ったのであった。

「なんだ、あのニワトリは」

と驚いて見ていると、

良久乃沖突而出。

やや久しくしてすなわち沖突して出づ。

しばらく時間が経ってから、ニワトリは元気に飛び出してきた。

ヤキトリにもならず、

毛羽不燋、鳴啄如故。

毛羽燋(こ)げず、鳴啄もとの如し。

毛も羽は焦げてもいないし、鳴いたり啄んだりするのもまったく元どおりであった。

「? なんだったんだろう?」

首をひねりながら伯玉は官服を脱ぎくつろいだのであるが、その日の夜に床に入ってからはもう立ち上がることができず、そのまま

病殞。

病に殞(そこな)わる。

病気で死んでしまった。

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といったような凶兆は見なかったので、明日も無事で過ごせると信じて寝ます。いろいろ不吉な予感(しごと関係)はあるけど。

(その一)(その二)はいずれも南朝宋・劉敬叔「異苑」巻四より。

 

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