平成24年7月6日(金)  目次へ  前回に戻る

 

あー、今週終わったー!・・・と思って帰ってきて、風呂入ろうと思っていたら、ほんとうについ今しがた電話。明日早朝出勤。あと数十分早ければ残っていたひとに頼めたのに・・・。楽しようとし過ぎたバツなのか。

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というわけで今日はじっくり更新しておられません。

チュウゴクの西北地方には剛強なひとが多く、東南の方には弱いひとが多いと申します。これは単なる文化の差異の故ではなく、大地の気がそうしからしむるところではないかと思います。なぜなら、ドウブツについても同様だからであります。

わたくし(←清・劉廷璣)は浙江の処州(すなわちチュウゴクの東南端に当たります)に八年赴任しておりました。

その間、毎年、人民からトラが一頭か二頭は捕らえられて献上されてきた。また、虎の皮・骨も多く届けられてまいりました。そのくせ、

不聞某処某人為虎所傷。

某処某人の虎の傷つくるところとなるを聞かず。

一度も、どこそこの誰それがトラにケガさせられた、ということを聞いたことがございません。

郡の古い記録には

日殺五虎。

日に五虎を殺す。

一日で五頭のトラを殺した。

という記録もある。

これは、二頭の巨大トラ、三頭の中型トラが府城に侵入してきて、ひとびとは慌て騒いだが、衛兵たちが槍と矢ですべて殺してしまった、という記録で、人間の側には住民を含めて一人の被害も無かった、というのである。

わたしの家で使っていた金寿というおとこ、ある晩、町の外から府城に還ろうとして峠道を越えた。

持紅灯籠緩歩山腰。

紅灯籠を持して山腰を緩歩す。

紅い灯りのカンテラを手にして、山をめぐる道をゆっくり歩いていた。

と、道の向こうの方、

遠望若灯三四盞。

遠く灯のごときもの三四盞を望む。

遠いところに灯りのように輝くものが三〜四個見えた。

―――村へ帰るひとであろうか。

だんだん近づいてまいりました。

すぐそばまで来て、金寿があいさつをしよう、としたとき、

方知為虎雙目。

まさに知る、虎の雙目なることを。

はじめて、二匹のトラのそれぞれ二つの目であることに気づいた。

―――!!!!!!!!

驚倒山崖。

驚いて山崖に倒る。

金寿はびっくりし、道を踏み外して崖から転げ落ちたのであった。

人与紅灯輾転滾下。

人と紅灯、輾転として滾下す。

人間と赤いランタンとが、ごろごろと転がって行ったのだ。

ぎゃん!

両虎不知何物、咆哮一声、曳尾而奔。

両虎、何物たるかを知らず、咆哮一声して尾を曳きて奔る。

二頭のトラには、それは何物に見えたのであろうか。ひと声叫ぶと、尾を引きずりながら逃げ出して行った。

何とも怯弱なトラではないか。

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清・劉廷璣「在園雑志」巻三より。藤川のいないはんちんみたいな感じ?

 

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