平成23年7月22日(金)  目次へ  前回に戻る

 

今日もぽんぽんが痛いのです。ひりひりする。まあでも仕方ない。今日はさきほど少しアルコールが入たせいで、地下鉄の駅で駅員さんにクレーマーをしてしまったのだ。情けない。○にたい。そうだ、○のう。どうせ今日から会社も休職になったのだ。○んで何の問題があろうか。

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もう死んだひとですが、18世紀後半、乾隆の盛世に鏡湖逸叟・陳名朗というひとがおったのですわ。字は蒼明といい、自ら暁山先生と号したという。出身は判然としないが、浙江・嘉興の生まれで進士となり、撫州令となったとひとだともいう。

このひとが著し、乾隆四十年(1775)に刊行されたのが「孝義雪月梅・五十回」であります。

話はオモシロくないし、出てくるやつ出てくるやつ封建シナの毒素が頭の芯まで回ったようなステレオタイプみたいなやつで、出てくる女性にもまた一人ひとり個性も魅力もないんです。ああイヤだ、イヤだ。

―――明の嘉靖年間に金陵(南京)の地に岑秀、字・玉峰という若者があった。先祖代々官僚を輩出した名家の子で、年のころ二十歳ばかり、姿すらりとして学問を好み、行いを篤くし、また弓が得意で、古今の軍略にも通じていた。彼が代々の仇敵である侯子傑のいやがらせを恐れて、老母をともない、母親の親戚を頼って山東・斤水の地に旅立つことから物語は始まる。

母の親戚は何式玉という読書人で、仙女・何仙姑を妻としていた。ところが、仙姑は小梅という年頃のムスメを残して仙界に去ってしまったので、何式玉は妻を思うているうちに病に倒れ、悪賢い親戚は何家の財産を自らのものとするとともに、小梅を浙江の王進士の家の下女として売りとばしてしまった。岑秀親子が斤水に着いたのはその直後で、親子は行き先の何家が無くなっているので困窮したが、何式玉の友人であった義侠のひと・蒋士奇が迎え入れてくれ、意気投合した二人は、蒋が叔父、岑が甥として、義理の叔父甥の契を結んだのである。

さて。

江南の六合に隠士・許綉なるひとあり。その年頃のムスメ、雪姐はある日、乳母の林氏と祖父の家を訪ね、その帰りに、江大、江四、江五兄弟らの盗賊団に捕らわれた。林氏は殺され、雪姐は商人のおやじに妾として売りとばされる。商人の妻はそのことを知って雪姐を虐待し、雪姐も商人おやじに操を奪われるのを羞じて、山東・斤水近くの旅館まで連れてこられたところで、首を吊って○んでしまった。

雪姐の屍は郊外の野に埋められるが、埋められる前に何仙姑が仙界から現れ、そっと屍の口に仙丹を含ませた。これによって雪姐の体は死後の腐敗を免れることとなったのであります。また、その魂は、たまたま先に死んで傍に埋められていた江西の行商人・劉じいさんの魂に声をかけられて目覚める。冥界の悪鬼たちが雪姐を責めに来るが、劉じいさんが一喝すると悪鬼どもは逃げ出してしまった。

劉じいさんは雪姐の自○した経緯を聴いて、

為義女、謂其後当大富貴。

義女と為し、その後まさに大いに富貴なるべし、と謂えり。

「おまえさんは義女じゃな。必ずこの後、大いに富み、かつ貴い地位を得るじゃろう」と教えた。

そして、

「おまえさんはいずれ生者の世界に戻ることになるであろう。そうしたら、わしの三男の劉電に伝えてほしいのじゃ。「おまえはわしの友人・蒋士奇の姪・蘇玉馨を妻とするように」と。・・・おまえさんか。わはは、おまえさんにはもう定まったひとがおるのじゃ。そのひとはおまえさんをこの闇から救い出してくれるじゃろう

というたのであった。

劉電は義侠心にあふれた若者であった。兄の命により旅先で死んだ父の亡骸を引き取るため、江西から山東にやってくる途中、儀徴の町で殷勇という勇み肌の男に出会う。殷勇は盗賊に殺された母の屍を引き取ったものの、資金が無く葬式が出せないでいた。それを聞いた劉電は有り金をはたいて殷勇の母の葬儀を出してやる。このため無一文になったが、殷勇はこれを恩義に感じて兄弟の契を結んだ。

一文無しになりましたが、劉電と殷勇は助け合いながら山東・斤水までやってきた。劉電は料理店で近村一番の義士と教えられた蒋士奇のところを訪ね、ここで岑秀とも出会って四人肝胆相照らしあった。劉電は仲間たちの力を借りて父親の埋められている場所を突き止めたが、悪鬼たちが周囲に結界を張って邪魔をするので、四人はそれぞれに武器をとって悪鬼たちを倒したのであります。

ようやく劉の父親の棺を掘り起こすと、先に少し新しい棺に突き当たる。みすぼらしい棺で、あちこち壊れていたが、その中から、生きているような美しい少女の屍が出てきた。

―――なんと美しい。

下になっている劉じいさんの棺を掘り出すために、岑秀が少女の屍を抱き上げて移そうとすると、そのときムスメは息を吹き返したのであった。

手当を受けて正気を取り戻したムスメは、江南六合の隠士・許綉の女、許雪姐と名乗り、ここに埋められるに至った事情と、死者の世界で劉じいさんから話されたことを四人に告げた。ただ、下線部については語らず、代わりに岑秀に熱い視線を注いだのであります。

話を聞いて、まず

「おお!」

と呻いたのは殷勇であった。実は殷勇の死んだ母というのは、なんという因縁でありましょうか、雪姐の乳母・林氏だったのであります。

「なんということだ。わしの母の仇がこれでわかった。江大・江四・江五の盗賊どもだったのだ。そして、雪姐さんよ。あんたはおれの乳兄弟だってことがわかった。今日からはおれたちは兄と妹だぜ」

さらに話を聞くうちに、

「ううむ」

と唸ったのは蒋士奇であった。

「なるほど、うかつであった。おまえさん(劉電を指した)の名前を聞いてもっと早く気づくべきだったのじゃが、おまえさんは江西の劉おやじの息子だったのだな。まさか、斤水を旅立つときにあれほど元気だった劉おやじがすぐ近くの旅館で死んだものとは思わず、いままでおまえを劉おやじの息子とも気づかなかった上、劉おやじの死骸をこんなところに一人にしてしまっていたのだ。何といううかつであろうか。劉おやじとわしは若いころからの友人だったのじゃ。劉から「わしにはまだヨメをもらっていない息子が一人おる。おまえさんの姪っ子を娶せるにふさわしい気風のよい男ぞよ」と聞かされていたが、それがおまえさんだったのだなあ」

そして、岑秀を仲人にして、劉電と素玉馨の結婚を執り行うこととし、さらに、

「岑秀よ。おまえさんもそろそろヨメをもらえばどうか。この御嬢さんはおまえさんに似合いと思うぞよ」

と雪姐との婚約を薦めたのであった。

真っ赤になってうつむく雪姐。

岑秀もまた日ごろの豪胆に似合わず取り乱したふうで、

「いや、御嬢さんのおやじどのの許しも無くそれはできますまい」

と落ち着かぬ。

しかし蒋士奇は岑秀の母親の同意を得、江南・六合の許隠士の諒解を得ることを正式の挙式の条件にして、二人に婚約させたのであった。・・・・・・・・・・

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あほらしい?

ばかみたい?

ご都合主義?

そうでしょうとも。わしもいやになってくる。

しかもここまででまだ第十五回の

試鉄弓叔姪顕英雄、  鉄弓を試みて叔姪は英雄を顕かにし、

解玉環劉蘇結秦晋。  玉環を解きて劉蘇は秦晋の結びをなす。

 鉄の弓を使って悪鬼を退け、叔父貴と甥っ子は武勇の名を高め、

 玉の環を解いて交換しあい、劉の息子と蘇の乙女は誇り高い愛を誓う。

の章まで。こんなのがあと三十五回分もあるのです。(>_<)

残りはまた後日。(なお、ダイジェストには「中国通俗小説総目提要」を参照した。)

 

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