平成22年3月31日(水)  目次へ  前回に戻る

1:参軍の黄仁濬の発言

・・・わたくしは五十歳のとき、隴州の主簿の官を辞めまして、次の職を得るまでにしばらく間があったことがございました。

その際、鳳州の文殊寺というお寺に参拝したのでございますが、わたくしが拝礼した途端に、

寺中有土偶数十躯、忽自然揺動、如酔人状、食頃不止。

寺中に土偶数十躯(ク)ありしが、忽ち自然に揺動し、酔人の状の如くして食頃も止まらず。

寺の中に土製の神像が数十体もあったのですが、これらが突然、ひとりでに揺れ動きはじめた。まるで酔っ払ったひとのようにふらふらとしはじめたのです。しばらく(メシを食うほどの時間)経っても止まらなかったのです。

珍しいことゆえ見物人が人垣を作るほどに集まって、係りの者が立ち入りを禁止せねばならないほどになったものでございます。

一体何の前兆であろうか。いいことであろうか、悪いことであろうか。

わしは気になって仕方ありませんでした。

しかしながら、

至今未得其応験。

今に至るもその応験を得ず。

今に至るまで十余年、今のところその答えらしいことには出会っておりません。

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2:虞侯の孫徳遵の発言

・・・わたくしが屋敷の寝室で眠ろうとしましたところ、

鉄燈檠忽自揺動、如人撼之。

鉄燈檠(とうけい)たちまち自ら揺動し、人の撼(うご)かすが如し。

鉄製の灯明台が突然ひとりでに揺れ動き始めたのでございます。まるで見えないひとが揺らせているようでございました。

わたしども何事の予兆であろうかと恐れおののいてベッドにもぐりこんでしまいました。

翌朝、その灯明台は何事も無かったかのようにそこにありましたが、

有婢偶至燈檠所、忽爾仆地、遂卒。

婢のたまたま燈檠の所に至るありしに、忽爾(こつじ)として地に仆(たお)れ、遂に卒す。

下女のひとりがその灯明台のところを通りかかったとき、(「ぎゃ」と叫んで)突然に倒れてしまい、そのまま死んでしまった。

のでございました。

驚いてその灯明台は物置の奥にしまいこみ、以来一度も使用してはいないのですが、一体どういうことだったのでございましょうか。

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いずれも五代〜宋のひと徐鉉が安徽の舒州で聴き込んだことだそうである(いずれも「稽神録」巻四による)。

十余年経っても「答え」の無い場合も、翌日に「答え」らしきものの出た場合もあるようですが、いずれにせよ何かが揺れたり発言がブレたりし始めたら何かが起こる予兆かも知れませんので、気をつけねばなりません。

 

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