令和2年9月1日(火)  目次へ  前回に戻る

海洋にはおカタいドウブツはあまりいない。たこ、イソギンチャク、ワカメ、ウミウシなどは脊椎さえない柔らかさだ。

もうダメだ。財産も地位も棄てて逃げ出したい・・・と思ったが、棄てるほどでもないので逃げ出すだけでいいみたいです。

・・・・・・・・・・・・・・・

元の時代のことですから、ゲンダイでは違うかも知れませんが、世間の人たちは、よく

家有万貫、不如出个硬漢。

家に万貫有るも、个(こ)の硬漢を出だすに如かず。

「たとえ一万貫の財産があるよりも、一人のカタい男が出るが、その家は栄えるもんじゃ」

と言います。

硬者非強梁之謂、蓋言操心慮患、所行堅固、識是非好悪之正者。

硬なるものは強梁の謂いにあらず、蓋し、心を操り患(うれ)いを慮り、行うところ堅固にして、是非・好悪の正を識る者なり。

ここでいう「カタい」というのは、強情とか頑固ということではなく、つまるところ、自分の感情をコントロールでき、先のことを考え、行動は浮ついたところなく、よい・わるい、すき・きらいの正しい分別ができる者のことである。

そんな立派な若い者がいるのだろうか、と疑問に思いますが、広い世の中にはいるのカモ知れません。

もしその家にこのような若い者(「子弟」)がいたら、

則貧可富、賤可貴矣。

すなわち貧も富むべく、賤も貴ぶべきなり。

当然のように、貧乏であっても豊かになるであろうし、地位が低くてもどんどん尊敬されるようになるであろう。

一方、

或富貴而子弟不肖、惟習驕惰、至于下流、豈富貴之可保。雖公卿亦不免于敗亡也。

或いは富貴にして子弟不肖、ただ驕惰に習えば下流に至り、あに富貴の保つべけんや。公卿といえどもまた敗亡において免れざらん。

もしも財産が有り地位も高くても、若い者がオロカ者ばかりで、エラぶっているだけで怠惰が身についてしまっているならば、どんどん落ちぶれて、どうして財産や地位を保つことができようか。たとえ今、朝廷の高官を出している一族であっても、やはり破産・滅亡から逃れることはできないであろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「至正直記」巻三より。落ちぶれた実例を挙げてくれるとオモシロそうで、「こいつはダメだな、おれの方がまだマシか」と優越感に浸れるのですが、実例は挙げられていませんので残念です。みなさんは財産も地位もお有りでしょうから、もし実例になったら報告してください。生きた教訓となります。

 

次へ