平成31年4月12日(金)  目次へ  前回に戻る

金属で作られた巨大な武人ロボット。スイッチを入れると右手の剣や左手の盃をゆっくり上下させるなど、ぶたロボットと匹敵するほどのすさまじい高性能であるようだ。

毎晩寒いです。金属の身体を持つロボットなら寒くないのだろうから、いいなあ。

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紀元前3世紀のころ、安南(今のベトナム北部)に阮翁仲というひとがいたそうなんです。

このひとは、

身長二丈三尺、気質端勇、異于常人。

身長二丈三尺にして、気質は端勇、常人に異なれり。

戦国末ごろの一丈はだいたい2.25メートルといわれます。それで計算すると、二丈三尺は約5.175メートルである。

身の丈は5メートル以上で、性格はまじめで勇気があり、どうみても普通のひとではなかった。

というような人なのですが、

少為県吏、為督郵所笞。

少にして県吏となるに、督郵の笞うつところと為る。

「督郵」は秦漢代の県に置かれ、県の役人を監督した官職。

若いころ、安南の地方官庁の下役として勤めていたが、(あるとき、何らかの失敗をしたとして)中央から派遣されてきていた監督官に笞で打たれたことがあった。

身長5メートル以上あるひとをムチ打つひとも、3メートルぐらいはあったんだろうなあ。

ムチ打たれた阮翁仲は、ためいきをついて曰く、

人当如是耶。

人まさにかくのごとくあるべきや。

「人と生まれてこんなことでいいのだろうか」

そして発憤して、

遂入学究書史。

遂に入学して書史を究む。

やがて学者の門を叩き、文書や歴史についての学問を究めた。

身長5メートル以上のひとが学ぶのですから、机も2〜3メートルはあったでしょう。

さて、

秦始皇併天下、使翁仲将兵守臨洮。

秦始皇の天下を併すや、翁仲をして兵を将いて臨洮(りんとう)を守らしむ。

秦の始皇帝が天下を統一すると、翁仲に将軍として、北の守りである臨洮城の守備隊を率いさせた。

臨洮は甘粛にあり、秦の時代、長城の西の端となっていた重要な要塞都市です。

声振匈奴、秦以為瑞。

声、匈奴に振るい、秦以て瑞と為せり。

その名声は匈奴族に恐怖を惹き起こすほどであり、秦は彼の存在を奇跡的なことと誇ったのであった。

翁仲の死後、

鋳銅為其像、置咸陽宮司馬門外。匈奴至、有見之者、猶以為生。

銅を鋳てその像を為り、咸陽宮司馬門外に置く。匈奴至り、これを見る者有りて、なお以て生くると為せり。

彼の銅像を作って、咸陽宮の司馬門の外に置いた。漢の時代になって、匈奴が咸陽まで攻めてきたとき、匈奴の兵士たちはその銅像を見て、

「まだ伝説の阮翁仲は生きておったのだ!」

と恐慌に陥ったという。

銅像になったら何か失敗してムチで打たれても痛くないからいいですね。

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明・陳耀文編「天中記」巻二十一「長人」より。「天中記」は典故となりうる昔の本の記述を集めてきた「類書」の一つなのですが、この阮翁仲の記事だけはどの本から引いて来たのか明記がありません。しかし必ず何か根拠があるのであろうから本当のことだと思います。こんなでかいひとが本当にいたのだ。やっぱりチャイナはすごいなあ。

 

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