平成30年9月14日(金)  目次へ  前回に戻る

「お互い協力してやっていくと困難を乗り越えていろんなことができるのニャぞ・・・と思ったが、ぶたとモグではニャあ・・・」「ぶー」「もぐらん」

昨日から交代した肝涼斎です。わずか一日でしたがツラかった。擦り切れてきた。

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紀元前六世紀ごろの楚の国に、黄斉(こうせい)と富摯(ふし)という重臣がおったのだそうでございます。

ある日、賢者が黄斉にところにやって来て、おっしゃった。

公、不聞老莱子之教孔子事君乎。

公、老莱子の孔子に君に事(つか)うるを教えたるを聞かずや。

「おまえさんは、周の賢者・老莱子が、学びに来た魯の孔子に教えた「君主への仕え方」を聞いたことがあるかな?」

と。(老莱子については、そのうち説明しますが、「老子」の著者に比定されることもある伝説の賢者で親孝行者である。)

黄斉は

「いまだし」(まだ聞いておりません)

と答えました。

賢者曰く、

「ふん。そうじゃろうなあ」

と黄斉を鋭く睨み据え、おっしゃった。

示之其歯之堅也、曰、歯六十而尽、相靡也。

これに、その歯の堅きを示す。曰く、「歯六十にして尽くるは、相靡(び)すればなり」と。

老莱子は、孔子にその健康な歯並びを見せて、言ったんじゃよ。

「歯はふつう、六十歳で全部摩り切れてしまう。互いにこすれあうからですぞよ」

―――しかるに、わしの歯が年をとってもそろっておるのは、こすれあわぬようにしているからじゃ。お前にはその意味がわかるであろう。

―――唯唯。

孔子は一礼してその教えに服したのであった・・・・・。

さて、黄斉よ、おまえさんのご承知のとおり、

冨摯能而公重、不相善也。是両尽。

冨摯能にして公重く、相善からざるなり。これ両つながら尽きん。

「冨摯は有能な男じゃ。そしておまえさんは朝廷で重きを為している。この二人が争いあうようでは、上と下の歯のようにどちらも、擦り切れてしまいますなあ」

「むむむ」

「楚の国のためにもよろしくない。王はどう思っておられるかのう」

賢者は居住まい正して、言った。

諺曰見君之乗、下之。見杖起之。今也王愛富摯而公不善也。是不臣也。

諺に曰く、「君の乗を見ればこれに下る。杖を見てはこれに起つ」と。今や王、富摯を愛せるに、公は善ならざるなり。これ臣ならず。

よくみんなが言うではございませぬか、

「ご主人さまの馬車を見たら、自分の車から降りんとなあ。ご主人さまが杖をついて歩いているのを見たら、座っていても立ち上がれ」

と。現在、王は富摯を信頼しておられます。公はその男と争っている。臣下としていかがなものでございましょうか」

黄斉も身を正して、

「お教えのとおりにいたします」

と答えたのであった。

これより黄斉は富摯の意見を容れ、いろんな場所でその才能を誉めるようになった。数月ならずして富摯も「黄斉さまはニンゲンの大きいひとだ」と称賛するようになり、王からの二人への信頼は一段と篤くなって、ともにその地位を全うすることができたのでございます。

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「戦国策」巻五・楚策より。勉強になりますね。肝冷斎一族が擦り切れていくのは当たり前だったんです。

ちなみに、最近「戦国策」を読んでいるので、その引用が多くなっておりますね。この本はオモシロい。

 

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