平成30年8月20日(月)  目次へ  前回に戻る

酒、タバコ、そして魚。これ以上「うまい」ものがあるであろうか。

肝冷斎の代わりに会社に出しているデクが、「デク冷斎さんは何もしないからジャマもしないんでありがたいっすよ」と言われたそうである。うまいこと言うなあ。

「うまいこと言う」のは大事ですね。歴史上も↓のような「うまいこと言う」例があるので、勉強しておきましょう。

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宋の建隆年間(960〜963)の初めといえば、太祖皇帝がクーデターで宋国を建てたばかり、まだ十国の多くの国々が統一されていない殺伐たる時代のことでございますが、

春宴、雨大作、楽舞皆失容。上色慍。

春宴するに、雨大いに作(おこ)り、楽舞みな失容す。上も色、慍(いか)れり。

春の宴会をはじめようとしたところ、大雨が降りはじめて、楽隊も舞方も対応に苦しむ状態となった。太祖皇帝のお顔色もおいらつきの様子である。

カミナリまで鳴りはじめた。中止するわけにもいかないのですが、どうやってはじめればいいのか・・・。

そのとき、前代の周以来の老宰相・范質が御前に進み出て申し上げた。

「皇帝陛下、おめでとうございます」

と言い出した。

今歳二麦必倍収。

今歳、二麦、必ず倍収せん。

「今年は、大麦も小麦も昨年の二倍は収穫できましょう。

まことによい雨に恵まれましたなあ」

皇帝はこれを聞きまして、

喜動顔色、命満泛。

喜び顔色に動き、満泛を命ず。

喜んだお顔つきになられ、盃を満たすように命じた。

宴会を開始したんです。

入夜方罷、莫不霑酔。

夜に入りてまさに罷め、霑酔せざるなし。

夜に入ってから宴会は終了したが、快く酔わない者はひとりも無かった。

ああ、

所謂宜在帝左右者、斯人也。

いわゆる帝の左右に在るべき者とは、この人なり。

天帝のお側に仕えるべきひと、というのは、この范質さまのようなひとを言うのであろう。

「詩」大雅・文王にいう、

文王陟降、在帝左右。 

文王陟(のぼ)り降り、帝の左右に在り。

 (すでに霊界に入られた)文王さまは、地に降って天下のことを監視し、天に昇って天帝に地上の状況を報告し、

(天譴としての災害などをどこに落とすべきかなど)天帝の相談に乗っておられるのだ。

と。范質さまは周の実質的初代王で聖人であられた文王さま、ぐらいのスバラシイひとである、ということである。

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「焦氏筆乗」続集巻六より。范質は周・宋革命の際に大義を守りながら現実に沿った措置を行い、両朝に仕えながら前朝の皇后や皇子らへの忠誠も尽くしたスバラシイ宰相なんです。亡くなったときに宋からの諡名・栄典の類は遺言してすべて断ったという。

 

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