平成30年7月1日(日)  目次へ  前回に戻る

ネコさまの言いなりに次々と忠義の臣下を叱責する入道どの。ただしモグは本来叱責されてしかるべき能力である。

やっぱり一日からアップできるようになったようです。ということで、今日の更新までやっておいて、今夜出奔しようと思います。

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真夏になってまいりましたので、せっかくだから怪談ものでもいたしましょう。

清代の北京には「四凶宅」といわれるすごいコワい家が四つあったそうなんです。

南城外瑠璃街にあったお屋敷はその中でも最凶といわれていたもので、いつも扉は閉ざされ、出入りするひともいなかったのですが、あるとき、

有山東賈利其値廉、僦之以開酒館。

山東の賈、その値の廉なるを利として、これを僦(か)りて以て酒館を開く有り。

山東の商人が、家賃の安いのに目をつけて、これを賃借して高級酒場をはじめたことがあった。

はじめのうちは

車馬塡門、無甚異。

車馬門を塡(うず)め、甚だしき異無し。

馬車や馬が門にいっぱい繋がれ(客の入りもよく)、大したことも起こらないでいた。

ところが、

一日、有貴官携両小伶来、猜枚行令、飲酒極豪。

一日、貴官の両小伶を携え来たりて、枚を猜して令を行い、飲酒極めて豪なる有り。

ある日、相当の身分の高い役人が二人の若い芸人を連れてやってきて、さかずきの数を賭けて酒令を行って遊び、極めて豪快に酒を飲んだ。

この一行が大騒ぎしていると、ふと

聞後院清歌婉転。響遏行雲、非精於音律者不能。

後院に清歌婉転たるを聞く。響きは行雲を遏(とど)め、音律に精なる者にあらざれば能わず。

裏庭の方から、すがすがしい歌を上手に歌うのが聞こえてきた。その響きは行く雲を止めようかというぐらい素晴らしく、相当音楽に詳しいひとでなければ奏でられそうにも無いレベルである。

音楽が行く雲を遏めたという実例(典故)はこちらを参照ください。

「どういうひとが演奏しているんだろうな」

高官は興味を持って裏庭の方に行ってみた。

「あっしらもお伴」「いたしやす」

と二人の芸人もついてくる。

遥望燈燭輝煌、似有十余客、分二席座。

遥かに望むに燈燭輝き煌めき、十余客の二席に分じて座する有るに似たり。

遠くから見ると、裏庭の一部屋には燈火や燭台が輝き、十数人のお客たちが二列になって向かい合って宴会を開いているようすである。

「ごあいさつでもしてみるか。わしは相当の高官だから相手も喜ぶだろう」

と言いながら、

趨近逼視、客皆無首。

趨り近づきて逼視するに、客みな首無し。

すたすたと近づいて、よくよく見たら―――宴席の客たちは、みな首が無かった。

「うひゃあ」

大驚仆地。両伶継至、亦仆。

大いに驚きて地に仆(たお)る。両伶継ぎて至りて、また仆る。

たいへんびっくりして地上に倒れてしまった。

「いったいどう」「なされましたかな」

と近寄ってきた二人の芸人も、宴席の客人たちを見て、

「うひゃあ」「バケモノだあ」

と倒れてしまった。

店のひとが慌てて出てきて、

灌救移時、始蘇。従此酒肆収歇、宅仍封閉矣。

灌して救うに、移時にして始めて蘇(よみがえ)る。これによりて酒肆収め歇め、宅よりて封じて閉さるるなり。

水をかけたりして手当し、しばらくの時間を経て、やっと三人は目を覚ました。こんなことが起こりはじめて、酒場としてもだんだん閉店同様となり、この屋敷は間もなくまた閉鎖されたのであった。

ひっひっひっひっひ。

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「翼駉稗編」巻二より。社会に不満を持ったままで滅んで行った者たちのしわざかも知れませんね。うっしっし。

 

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