平成29年10月18日(水)  目次へ  前回に戻る

亀のようにのそのそしてきたおいらだが、明日からは切れ者になるかも知れんのだぞ。

昼間は少し暖かかったのに、夕方からは寒い。しかし今日から睡眠時無呼吸症候群治療用の機械借りてきたので、凍死してもわからないぐらいぐっすり眠れるはず。

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明の萬暦丁未年(1607)、浙江・遂昌の民・宋甲なるもの、川で龞(ベツ。すっぽん)を捕っていて、

得一極大者。

一極大者を得たり。

とにかくでかいのを捕まえた。

「これはでかいな」

と漁民仲間も驚いて、みんなで家に運びまして、

烹之、従釜中湧而起、因取巨石圧其釜蓋。

これを烹るに、釜中より湧きて起こらんとし、因りて巨石を取りてその釜蓋を圧す。

でかいなべに入れて蓋をして煮た。すると、釜の中から出ようとするようなので、巨大な石を運んできて、釜のふたの上に重しとして置いた。

それでもぼこぼこと中で動いております。

諦聴之、如念仏声。

これを諦聴するに、念仏の声の如し。

よくよく聴くと、なんだか中で念仏を唱えているようなのだ。

「これは実は霊的にマズいものなのではないか」「今からでも煮るの止めてしまった方が・・・」

とまわりのひとは心配したが、

甲不信。

甲信ぜず。

宋甲は「そんなはずがあるもんかい」と取り合わなかった。

ぐつぐつぐつ。

煮ているうちになべの中も何も言わなくなりました。

熟而剖焉。

熟して剖(さ)けり。

充分煮えたところで蓋を取り除け、すっぽんを取り出して、「やっぱり、ただのすっぽんじゃないか」と言いながら包丁で解体した。

すると・・・・・・

出ました!

中有一比丘端坐、手握牟尼珠、方袍円帽、斬然如新。

中に一比丘の端坐し、手に牟尼珠を握りて方袍円帽なる有りて、斬然として新たなるが如し。

すっぽんの中から、正座した坊さんが出てきた。坊さんは手にムニ珠といわれる丸い玉を握って、四角ばった上着を着、丸い帽子をかぶっていた。まるでさっきまで生きていたかのようであった。

チベットかネパールあたりの僧侶のかっこうをしていたのだと思われます。

「うわー」

みんな大いに驚き、そのウワサはあっという間に広まって、

観者動万。

観者、万を動かす。

一万人以上のひとが観に来た。

宋甲は坊さんが出てきたころから意味も無く震えたり黙ったまま何も言わなくなっていたが、ある晩、

棄之山中、未幾病疫、発狂而卒。

これを山中に棄て、いまだいくばくならずして疫を病み、発狂して卒せり。

坊さんの死体を担いで出て行き、どこかの山の中に捨ててきたらしい。しばらくして流行病に罹ったかと思うと、狂いだして、死んだ。

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明・銭希言「獪園」第六より。

今日からはナベで煮られたり山中に棄てられたりしても目覚めないぐらい、ぐっすり眠れるかも知れません。そうしたらおいらもアタマが冴えて「切れ者」と呼ばれるようになるかも・・・いけね、おいらぶただからアタマ冴えることはありえないのでした。でぶー。

 

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