平成29年9月8日(金)  目次へ  前回に戻る

秋になってきました。クマもそろそろ冬眠中の食べ物を集めないといけないのですが、巨大ニワトリから独占を批判される。調子にのったひよこどもにまで正論の指摘をされるのはツラいところだ。

ほんとにもう、なんかダメだ。季節の変わり目だからダメなんだと思うが、季節が変わり切ったらよくなるか、と言われたらそんな自信も無いのである。

どうせおいらはセミのカナカナなんだから、初秋で終わりだしなあ。

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明のはじめのころ、山西・平陽の張金箔なる者は幻術を善くしたが、あるとき、宮中に呼ばれて皇帝の前でその術を披露することになったのだそうでございます。

まず、

以瓶注水、書符投之、用火四炙。

瓶を以て水を注ぎ、書符をこれに投じて、火を用いて四炙す。

瓶の中に水を注ぎました。それに何やら書き付けたお札を投げ入れ、それから火をつけた燭で、四方から炙ります。

すると、やがて、

気出如縷、遂成五色雲、布満殿上。

気出でて縷の如く、ついに五色雲を成して殿上に布満せり。

その瓶の口から、糸のようにガスが出てきて、それが五色の雲になり、御殿中に広がったのでございました。

「すばらしい」

居並ぶ皇帝や女官や宦官たちは拍手喝采しました。

次いで、宮中を流れる金水河と呼ばれる小川のほとりに行き、

以蓮子撒金水河、頃刻開花万朶、鮮妍絶倫。

蓮子を以て金水河に撒くに、頃刻にして開花すること万朶、鮮妍なること絶倫なり。

ハスのタネを金水河にばらまいた。しばらくするとハスの葉が水面を蔽い、その間から花が現われ、あれよ、という間に次々と、一万ほどが花開いたのであります。その花のあざやかで美しいこと、世の常のハスの花のたぐいにはございませぬ。

皇帝は感嘆して、宦官を通じて、

「先生の術には、いったいどんなタネがあるのか」

と問わせた。

すると、張は首を振り、

「なんのタネもございません」

と答えました。

皇帝はその答えを聞くと、にわかに張が恐ろしくなり、

「そやつは妖人じゃ。捕らえよ!」

と命じたのであった。

しかし、

張乃剪紙為船、身坐船上。

張はすなわち紙を剪りて船と為し、身、船上に坐す。

張はおもむろに、ふところから紙とハサミを出すと、紙をちょきちょきと切りまして、船の形にして、小川に浮かべた。すると不思議なことにそれが人を乗せられるような大きさになりました。張はそれに乗り込んでちょこんと座ったのです。

そしてにこりと笑いますと、

唱采蓮歌、忽失所在。

「采蓮歌」を唱い、忽ち所在を失えり。

「ハスの実をとるときのうた」をうたいはじめました。船はゆっくりと動きはじめ、すぐに花の影に隠れて見えなくなってしまったのでございます。

その後、張の所在は杳として知れない。

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明・江盈科「聞紀」より「紀讖術・張金箔」

こういうふうにして、みなさんの前から、もうすぐ消えますカナ。

 

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