平成29年1月9日(日)  目次へ  前回に戻る

海中からFAして陸生動物になったアンコウくんの人的補償として・・・。

わーい、わーい、おいらとうとう南海龍王さまにスカウトされて、南の海に沈みました。

ぶくぶく。

こうしてわしは海のモノと変化し、とある海蝕洞穴でシアワセに暮らすことになりましたので、ニンゲン社会とはお別れです。みなさん、長い間ありがとうございました。

ここです。ここ。

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どこの海蝕洞穴かと言いますに、大ヒント。

江上雁声哀有余、 江上の雁声、哀として余り有り、

舟中俄作問安書。 舟中にわかに作る、問安の書。

長江の上を、(書信を運ぶという言い伝えの)雁が鳴いて過ぎていく、その声を聞くと哀れな気持ちが起こってきて、どうにも遣る瀬がない。

そこで、舟の中で、突然、実家に元気でいるか訊ねる手紙を書いてしまった。

白雲祇覚郷心切、 白雲ただ覚ゆ、郷心の切なるを。

阿母煢然老倚閭。 阿母は煢然(けいぜん)として、老いて閭に倚らん。

「煢」(ケイ)は、「鳥が飛びめぐる」という会意の字だそうですが、飛びめぐる鳥は一羽である、孤立している、ということから、「孤独である」の意になります。

白い雲を見ると、(あのはるかかなたの空に郷里があるのだと言うた唐人の語を思い出して)ただ郷里のことが気にかかってならぬのじゃ。

実家ではおふくろが、たった一人、老いて家の門にもたれかかっていることであろう(わしの帰りが今日かと思うて待っているのだ)。

この詩を書いたひとの郷里でありますよー。ぶくぶく。

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西村天囚「長江舟中」「明治漢詩文集」所収)。

ニンゲン世界から消えましたので、今回で第一期「肝冷斎雑志」地上篇は最終回です。次回作をどうぞお楽しみに!

さあ、もうひと沈みしてくるか。

 

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