平成28年9月15日(木)  目次へ  前回に戻る

夜露の代わりにヒキガエルの油がたらーりたらり。

ずっと曇っていたが、夜になって雲が薄らいだので、さきほど月が見えていた。

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銀蟾皎潔、玉露凄清。

銀蟾は皎潔にして、玉露は凄清なり。

「銀蟾」(ぎんせん)=しろがね色のヒキガエル、とは、月のこと。月の中にはヒキガエルが棲んでいる(月の模様はヒキガエルに見えるでしょう?)という伝説に基づく。

カエル栖む銀の月は、ぴかぴかと光輝き、月から降る玉の露は、この上なく清らかである。

このとき、

四顧人寰、万里一碧。

人寰を四顧するに、万里一碧なり。

ニンゲン世界の四方を見渡すに、はるかな万里のかなたまで、ただ紺碧一色の夜の空だ。

それではこの月光に乗じて、出っぱつー!

携一二良朋、斗酒淋漓、彩毫縦横。

一二の良朋を携え、斗酒淋漓し、彩毫縦横せん。

一人二人の良き友と手をとりあってふらふらと出かけよう。一斗の酒をあびるように飲もう。色筆を縦に横にきままに動かして景色を紅葉させよう。

月には美しい女神・嫦娥さまが棲んでおられるという。

仰問嫦娥悔偸霊薬否。

仰いで嫦娥(じょうが)に、霊薬を偸みしや否やを問わん。

空を見上げて、月にいる嫦娥さまに、本当にあなたは、夫君の大切な不死の霊薬を盗んだのかどうか、訊ねてみたいものだ。

「嫦娥さま」の伝説は「淮南子」にあります。興味あるひとは、こちらをご覧ください。→娥奔月」

ああ、お酒やらなんやらキモチよくなった。

安得青鸞一隻、跨之、憑虚遠遊、直八万頃瑠璃中也。

いずくんぞ青鸞の一隻を得てこれに跨り、虚に憑りてただちに八万頃の瑠璃中に遠遊せん。

なんとかして青い鸞鳥を一羽手に入れてきて、これにまたがり、虚空を越えて、まっすぐ数十万ヘクタールにも広がるガラスの大地(夜空のことである)まで、遠く旅したいものだなあ。

「一頃」(いちけい)は、だいたい七ヘクタール弱、だそうですので、「八万頃」は50万ヘクタールぐらいか。

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明・衛冰編「枕中秘」より「閑賞・中秋」「明人小品集」所収)。だんごも食いたいね。

 

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