平成28年6月28日(火)  目次へ  前回に戻る

ぶうぶう。ブタとはいえ、へこたれるものか。

雨が降るとみんなウツっぽくなっていいですね。

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今日はかわいいブタちゃんのお話でーちゅ。

隋の開皇(589〜600)の末ごろということだが、渭南のひと、

寄宿他舎。

他舎に寄宿す。

他人の家に宿泊していた。

そのひと、夜半に目を覚ますと、なにやらごそごそ・ぶうぶうと話し声がする。

(ぶうぶううるさいなあ・・・)

と思いながら、聞くともなしに聞いていると、なんと、それは

豕対話。

二豕の対話するなり。

この家の二匹のブタが会話しているのであった。

「ぶうぶう」「ぶいぶい」

一匹がいうには、

歳将尽。阿爺明日殺我供歳。何処避之。

歳まさに尽きんとす。阿爺(あや)、明日我を殺して歳に供えん。何れの処にこれを避けんか。

「もう今年も終わりでブウ。うちのおやっさんは、明日はおいらを殺して、年神さまのお供え物にすると思うんでブウ。どこに逃げたらいいものか」

「ぶうぶう」「ぶいぶい」

もう一匹が答えた。

可向水北姉家。

水北の姉家に向かうべし。

「川の北岸にあるねえさんの家に逃げるでブイ」

「そうするでブウ」

因相随去。

よりて相随いて去れり。

そして、二匹前後しながら出て行ったようであった。

―――朝になりました。

主人覓豕不得。

主人、豕を覓(もと)むるも得ず。

宿の主人、ブタを屠殺しようと探したが、見つからない。

疑是宿客得之。

疑うらくはこれ宿客のこれを得るか、と。

そこで、宿泊客が盗んだのではないかと疑った。

「滅相もない。それより・・・」

宿客言状。

宿客、状を言えり。

お客は、昨夜聞いたことをそのまま告げた。

「なんと!」

主人は驚いた。

「川向うに野生のイノシシが棲みついた穴があるが、それのことであろうか」

主人が近所のひとたちとともに狩り出しに行ってみると、イノシシは見つからなかったが、確かにその家の二匹のブタが潜んでおり、観念したように穴から

「ぶうぶう」「ぶいぶい」

と出てきた、ということである。

その直後のこと、

蜀王秀得罪、文帝将殺之。

蜀王秀罪を得、文帝これを殺さんとす。

蜀王の楊秀が罪に問われ、文帝さまに殺されそうになった。

そのとき、

平楽公主救之得全。

平楽公主これを救いて全きを得たり。

文帝の娘で蜀王の姉である平楽公主さまが弟のために命乞いをし、おかげで助かった。

ということがあった。

ブタたちの言動はこの事件を予知していたのかも知れない。

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そんなはずはない、と断言できます。そんな予知してもブタにとって何の得もありませんので。

唐・陸勲集「集異志」巻四より。ぶうぶう。

 

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