平成28年4月16日(土)  目次へ  前回に戻る

BR(日本ぶた鉄道株式会社)イーハトーブ発ベーリング行き最大特急(※)、出発! でぶう。

九州では今朝未明にまたでかいのがあって、JR九州の列車(久大線?)も脱線したり、交通・流通が深刻な感じになってきているようです。

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大自然はすごいんです。

明の嘉靖年間(1522〜1566)、南シナ海を航海していた船がありましたが、真昼間のこと、突然見張りの船員が騒ぎ出した。

「あわわ、あ、あれを見ろ!」

というのでみなでその指さす方を見て、みんな驚いた。

見海神特立水上、高可丈余、朱髪長髯、冠剣偉麗。

海神の水上に特立し、高さ丈余ばかり、朱髪にして長髯、冠・剣偉麗なるを見る。

船の前方の海上に、海神さまがひとり、立っておられたのだ。海神さまは背の高さ2〜3メートル、赤い髪をしておられ、頬ヒゲ長く、かぶっておられる冠や腰にされた剣など、いずれも巨大できらきらと輝いておられた。

「うわー」「このままではぶつかる!」「に、逃げろー」

とみな騒いだが、経験長い老船長は

「騒ぐでねえ!」

と船員どもを一喝した。

「海神さまが、おれたち海の者の祈りを聞き届けてくださらなかったことが、あるか?」

そして、船員たちに持ち場についたまま、静かに平伏させた。

すると、

海神徐掠舟而過、有光景経久不滅。

海神おもむろに掠舟して過ぎ、光景久しきを経て滅せざる有り。

海神さまはゆっくりと舟をかすめるようにして通り過ぎられた。舟の背後に回られてからも、そのお姿はかなりの時間、見えていたのであった。

さて。その翌日―――。

三舟復見。

三舟また見る。

三隻の船の乗組員たちがこの神の姿を見た。

これらの船では、

大噪拒之。

大いに噪(さわ)ぎてこれを拒まんとす。

生き残った船員たちの話では、大騒ぎして、神を避けようとしたらしい。

すると

風波大作、舟尽覆。

風波大いに作(おこ)り、舟ことごとく覆る。

暴風と高波が起こって、舟はみな転覆してしまったのだ。

というのである。

語云、上海人、下海神。蓋言以海神為命也。

語に云う、「上海の人、海神に下る」と。けだし、海神を以て命と為すなり。

この地方では、俗に、「海上に出るニンゲンは、海神さまには頭を下げろ」と言う。海神さまのことを天のお告げのように貴く思うのである。

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清・屈大均「広東新語」より。「すごいのは大自然ではなく海神さまではないの?」みたいに見えますが、海神さま自体が大自然のかたちを為したもの、というべきなので、すごいのはやっぱり大自然なんです。

※宮沢賢治「氷河鼠の毛皮」参照。

 

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