平成28年4月9日(土)  目次へ  前回に戻る

いいモノ発見したら、独りでなんとかしようとせず、みんなの協力を得ようとしてもらいたいもんだおー。

本日は都内某所で桜の花を見てきました。あと一日はニンゲンとして生きているつもりである。

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唐の時代、「牛李の党争」の一方の旗頭で、宰相もつとめた李徳裕が、長慶年間(821〜824)に浙江南部に赴任していたときのことである。

ある漁師が秦淮河に網を下ろしたところ、

忽覚力重、異於常時。

たちまち力重く常時に異なれるを覚ゆ。

突然、何かがかかったらしく、ふつうでない重さを感じた。

「なんだ、なんだ」

とがんばって引き上げましたが、

及斂就水次、卒不獲一鱗。但得古銅鏡、可尺余、光浮於波際。

水に斂就する次に及ぶも、ついに一鱗をも獲ず。ただ古銅鏡の、尺余ばかりなるが、光りて波際に浮かぶを得るのみ。

網を水中から引き上げたところ、うろこのあるものは一匹も入っていなかった。ただ、直径30センチもあろうかという古い銅製の鏡が、波の間にぴかぴかと光りながら浮かび上がってきたのが得られただけであった。

「これがあんなに重かったのか」

漁人取視之、歴歴尽見五臓六腑、血縈脈動。

漁人取りてこれを視るに、歴歴として五臓六腑、血縈(えい)脈動をことごとく見る。

漁師は何気なく網の中の鏡を手にして覗き込んだところ―――

自分の内臓や、血管やリンパ液の流れが全部、鏡に映っているいたのであった。

「うひゃあ」

竦駭気魄、因腕戦而墜。

気魄を竦駭(しょうがい)し、因りて腕戦(おのの)きて墜とす。

びっくりしてキモチが竦んでしまい、腕が震えて鏡を水中に取り落としてしまった。

どぶん。ぶくぶく。

その不思議な銅鏡はまた水中深く沈んでしまった・・・。

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・・・てことがあったのさ」

と、

漁人偶話於旁舎。

漁人、たまたま旁舎において話せり。

漁師は、近くの漁師小屋で仲間たちに(酒でも飲みながら)話したのであった。

これがまわりまわって李徳裕の耳に入りました。

徳裕、

「なんと! そのような不思議な鏡が見つかったというのか。なんとしても探し出して、皇帝陛下に献上申し上げるのだ」

と、すぐ捜索するように命じた。

翌日、役人が何人も、コワい顔をしてどかどかと漁師のところに来まして、話を詳しく聞いた。そして漁師を連行して、

尽周歳、萬計窮索水底。

周歳、萬計を尽くして、水底を窮策せり。

それから一年の間、多額の資金を使って、そのあたりの水底を捜索した。

しかし、

終不復得。

ついにまた得ず。

とうとう、その鏡は二度と発見できなかった。

のだそうである。

見果てぬ夢のように諦めきれなかったのでございましょう。

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唐・李濬「松窗雑録」より。

おいらもあと一日は見果てぬ夢を見直そう、とがんばるよ。

おまけ。←ソメイヨシノのはなびらハスもあった(於:新宿御苑)

 

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