平成27年7月23日(木)  目次へ  前回に戻る

好き放題食べているひともいるというのに・・・。

食べ物減らしているのに体重増。血圧も上昇。もうやっていけない感じがさらに強まってまいりました。

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食べ物のことはいろいろ難しいんです。

これも名高い話でございますが、戦国の孟嘗君(←さすが一発変換)といえば「食客三千人」で有名な方ですが、ある日、

孟嘗君会待客夜食、有一人蔽火光。

孟嘗君、かつて客を待して夜食するに、一人の火光を蔽わるるあり。

孟嘗君が食客たちを接待して一緒に晩飯を食ったとき、その中に一人、灯火の光が行きわたらず、このため自分の手元の御膳が見えなくなってしまったひとがいた。

この人

怒以飯不等、輟食辞去。

怒りて、以て飯等しからずとし、食を輟(や)めて辞去せんとす。

突然怒り出した。そして、

「わしの食い物だけほかのひとと違うのだろう、だから見えないようにしているのだ! こんなところには居られん!」

と言い出して、食事を止めて席を立とうとした。

これはヘンなひとです。

これを聞いた孟嘗君は、

起自持其飯、比之。

起ちて自らその飯を持してこれに比す。

立ち上がって、みずからの手で自分の御膳を持ってきて、その人の御膳と比べた。

不異。

異ならず。

内容はまったく違わなかった。

「なんだ、同じですなあ」

「ああそうですなあ」

「わっはっはっは」

「いっひっひっひ」

と和やかにいけばよかったのですが、

客慙自剄。

客、慙(は)じて自ら剄(けい)せり。

その人は、申し訳なく思って、自らの首を切って死んでしまったのであった。

このことが広く知られると、

士以此多帰孟嘗君。

士、ここを以て多く孟嘗君に帰す。

天下の有為の士たちは、このことに感動して、我も我もと孟嘗君のところに集まってきたのであった。

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食べ物が違うと言って怒り、同じだったからといって自分の首を刎ねてしまうのです。食べ物のことは難しいのですなあ。

「史記」巻七十五「孟嘗君列伝」より。話がオモシロい、といいますか客人の行動が意表をついて印象的だからでしょう、「蒙求」巻下にも「田文比飯」(田文飯を比ぶ)(※「田文」は孟嘗君の姓名)として引かれ、人口に膾炙する故事成語となっているのでございます。

 

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