平成27年6月2日(火)  目次へ  前回に戻る

心当たりはカレーライスと味噌ラーメンとおにぎりぐらいだが。

なんにも悪いことをしていないつもりなのに、体重増。何か効果的な対処法は無いものか。

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則天武后(又は武則天。在位684〜705)の時代、瀛州から鼎師という男が長安にやってきた。(←「鼎師」が名前とは思えないので、「なべ奉行」というような意味の綽名であろう)

武后のお気に入りの娘である太平公主さまが

「これはおもしろい男でございますわ」

と推薦なされたので、武后はその能力をお試しになった。

「得意なことをしてみるがよい」

「ははー、ありがたきしあわせ」

鼎師は

以銀瓮盛酒三斗、一挙而飲尽。

銀瓮を以て酒三斗を盛り、一挙にして飲み尽くせり。

銀のカップに酒18リットル(唐代の一斗=約6リットルで換算)をなみなみと注ぐと、ぐぐぐい、と持ち上げて、いっぺんに飲み干してしまった。

さらに曰く、

臣能食醤。

臣よく醤を食らう。

「わたくしはさらに醤油を呑むこともできまする」

「やってみよ」

「ははー、ありがたきしあわせ」

即令以銀缸盛醤一斗。

すなわち、銀缸を以て醤一斗を盛らしむ。

ただちに銀のかめに醤油6リットルを入れて持ってこさせた。

鼎師以匙抄之、須臾即竭。

鼎師、匙を以てこれを抄し、須臾にして即ち竭くす。

鼎師は大さじで掬って飲みはじめ、あっという間に空っぽにしてしまった。

「みごとじゃ」

「ははー、ありがたきしあわせ」

武后は彼に官職を与えようとしたが、鼎師は

情願出家。

情として出家を願う。

「どうか出家させてくださいませ」

と申し出たので、武后はたいへんお喜びになり、

即与剃頭。

すなわち、剃頭を与う。

すぐに頭を剃らせてやった。

「ありがきしあわせにござりまする」

鼎師は大いに感謝して退出したが、しばらくすると

如来螺髻、菩薩宝首。若能修道、何必剃除。

如来は螺髻なり、菩薩は宝首なり。もしよく道を修むれば何ぞ必ずしも剃除せん。

如来(悟った人=ブッダ)の頭は天然パーマのもとどりがあるではないか。菩薩(悟りを求める人=ボーディサッタ)の頭部は宝玉の髪飾りでかざられているではないか。もし道を得ているならば、坊主頭で無くてもええじゃないか。

と言い出しまして、髪を長くして常人の姿で暮らしていた。

後にその奇行を咎められて杖一百の罰を与えられたが、百杖くらっても

不廃行動、亦無瘡疾。時人莫測。

行動を廃せず、また瘡疾無し。時人測るなし。

体のどこかが動かなくなるということもなく、ケガも体調不良も無かった。当時のひとびとは「まったくあの方はわからんわい」と頭を抱えたものである。

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唐・張鷟「朝野僉載」巻三より。

醤油ダイエットでもするか。効くかも知れません。効いたら報告します。(なお、「醤」はゲンダイ日本の「醤油」とは違い、シオカラの汁みたいなものだそうですが、ここではめんどくさいので「醤油」と訳しました。)

 

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