平成26年12月16日(火)  目次へ  前回に戻る

「ドウブツに変化した? 子どもが本気にしたらどうするんですか?」

今日もすっごい寒かった。今日はICさんを囲む会。このICさんのお話は実にオモシロい。某J1所属チームの社長さんの姿もあった。

ICさんのお話のほどにはオモシロい話はできないのですが・・・。

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清・康熙四十年(1701)のこと、江浙・東陽県の某村の章某という家でのこと。

有一老婦人、年已七十余、時時無故他出、輙数日不帰。

一老婦人、年すでに七十余なる有りて、時々に故無くして他出し、すなわち数日帰らず。

その家のばばあは齢すでに七十を越えていたが、これが時おりわけも言わずにどこかに出ていき、数日にわたって帰ってこない、ということがあった。

その息子、いったい何故だろうかと疑って、ある日、外出したふりをして垣の陰に隠れ、ばばあが家から出てくるのを待ってその後を尾行してみた。

ばばあはどんどん山の中に入って行き、ある木の陰で、ふい、と消えてしまった。

息子は急いでばばあの消えてしまったあたりに駈けつけてみると、深い山中に誰が建てたものか、土地神の小さな祠がある。耳を澄ませてみると、

聞祠中声甚異。

祠中に声のはなはだ異なるを聞けり。

祠の中から、たいへん不思議な声が聞こえてくるのであった。

「?」

祠の扉を開けてみると、中では、

見其母方躑躅変虎。

その母、まさに躑躅(てきちょく)として虎に変じんとするを見る。

自分のおふくろが、ちょうどよろよろとトラに変化しようとしているのが見えたのであった。

「うひゃあ、どうしたのだ、おっかさん!」

息子は大いに驚き、

従後握其髪。

後ろよりその髪を握る。

背後から、その頭髪をつかんだ。

そして、

持之不釈。

これを持して釈かず。

それを摑んだまま放さないでいた。

すると、

母以爪傷子面。負痛放手、母跳躍而去、不知所之。

母、爪を以て子の面を傷つく。負痛して手を放すに、母跳躍して去り、之(ゆ)くところを知らず。

母はもうほとんど変化してしまっている腕を振り上げ、息子の顔をがりりと引っ掻いて傷つけた。息子が痛みに耐えかねて手を放すと、そのすきに母は

ぴょ〜〜〜ん

と飛びあがってどこかに逃げて行ってしまった。いったいどこに行ったのか、皆目わからない。

傷が癒えた後、息子は山の中を隈なく探してみた。そしてもっとも深い山奥の森の中で、

見一披髪虎前行、後従数虎。子不敢近。

一の披髪の虎、前に行き、後えに数虎を従うるを見たり。子、あえて近づくなし。

後頭部の髪の毛を失ったトラが先頭を歩き、後ろに数匹のトラが従っている姿を見た。しかし、息子はそれ以上近づくことができなかった。

けだしもう、完全にトラに変化していたのである。

息子はがっかりして帰ってきた。

このこと、当時、

伝聞遠近。

遠近に伝え聞こえたり。

ずいぶんあちこちでウワサになったことである。

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清・東軒主人「述異記」巻上より。コブンのトラがいたんですな。

 

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