平成26年10月26日(日)  目次へ  前回に戻る

 

もう週末終わり。明日からまた平日。

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三国を統一した晋帝国でありましたが、内乱に乗じて異民族が侵入し、愍帝の建興四年(316)には跡形も無く崩壊してしまった。このとき皇族の一人・司馬睿が江南に即位(元帝という)して亡命政権を建てたのが東晋であります。

その元帝の晩年、永昌元年(322)のこと。

東晋軍閥の一人・甘卓は、別の軍閥の総帥である王敦を討滅せんとした。

しかしいろいろ事情がありまして、

既而中止。

既にして中止せり。

攻撃計画を中止せざるを得なくなった。

ところが、

及還家多変怪。

還家に及んで変怪多し。

本拠地に戻ると、不思議な現象が次々と起こった。

甘卓は

「気にしているから、おかしなことが起こったように思えるだけじゃ」

と意に介さなかったが、ある日、

照鏡不見其頭。

鏡に照らすに、その頭を見ず。

鏡をのぞきこんだところ、自分の首から上が映らなかった。

「ど、どういうことだ、あわわわ、クビが飛ぶのかあ?」

と驚き怪しんでなにごとも手に着かなくなってしまった。

やがて前線から使いが来て、

為王敦所襲。

王敦の襲うところと為れり。

「お、王敦さまが攻めてまいりまいしたあ!」

と知らせがありましたが、子どものように怯えおののくばかりで何の手を打つこともできず、

遂夷滅。

遂に夷滅せり。

とうとう一族皆殺しになってしまった。

のでございました。

また、ずっと後の時代のことでございますが、東晋の滅亡近い安帝の義熙年間(405〜418)に東陽太守となった殷仲文も、ある日、

照鏡不見其頭。

鏡に照らすにその頭を見ず。

鏡をのぞきこんだところ、首から上が映らなかった。

「ど、どういうことだ、あわわわ、クビがとぶのかあ?」

彼もまた直後に、劉裕らにたばかられて害せられたのであった。参照→書」り「鏡」

ということで、

【結論】鏡に頭が映らないときは気をつけましょう。

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唐・陸(りくくん)「集異志」巻一より。

わはは、鏡に頭だけ映らないなんて、そんなバカげたことがあるものか。昔のひとはこんなことを信じていたんですかね。さて、ヒゲでも剃ってくるかな・・・。

・・・「ど、どういうことだ、あわわ。明日のしごとでいよいよクビがとぶのかあ?」

と怯えるぐらい明日コワい。

 

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