平成26年3月16日(日)  目次へ  前回に戻る

 

あたたかくなってきました。間もなく春だ。春になったらシガコも解けて、みなさんの願い事もかなうかも。STAP細胞もできるかも。

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おいらもカシコくな(って人を見返してや)りたいなあ、と願い事を言いながら清・陸次雲「八紘譯史」を閲していましたところ、こんな話が載っていた(巻一)。

・・・明の正徳年間(1506〜1521)に、琉球国から

玉脂燈

というモノを貢進してきた。

どのような人(あるいは精霊か)の製したものかは不明だが、夜になると油を指さずとも自然に灯がともり、その光はたいへん明るい。それだけでなく、深夜たった一人でこの燈に向かって願い事を唱えれば、そのことの成否が、その灯のゆらめきの中に見える、ともいう。

皇帝、大いにこれを気に入り、

行幸必携之。

行幸必ずこれを携う。

お出かけになるときには、必ずこれを持ち運ばせた。

のであった。

さて、正徳年間、宮中と内閣に大いに力をふるい、帝位さえうかがったという奸人・劉瑾の耳にも、当然のようにこの燈の不思議な力のことが聞こえてきた。

「ほほう・・・。願い事を、のう・・・」

劉瑾は香山に行幸のあったとき、腹心の宦官に命じて、極秘に帝の荷物の中から玉脂燈を持ち出させ、深夜、

竊以自照。

ひそかに以て自ら照らす。

他人に隠れて、そっとその光を自らに向けた。

すると―――

燈忽放花如人面、眉目畢具。

燈、たちまち花を放ち人面の如く、眉目畢具せり。

燈の光は花が開くように広がり、そこに眉や目の完備した人間の顏が現れたのであった。

「おお・・・」

劉瑾は、その顏に向かって、ささやくように言った。

我成大事、封汝為光明大元帥。

我、大事を成さば、汝を封じて光明大元帥と為さん。

「わ、わしが大仕事をし遂げたあかつきには、おまえを光明大元帥と名付けて神として奉ってやろう・・・」

劉瑾のいう「大事」とは、皇位簒奪のことにほかならない。

「わしの大仕事は如何に・・・」

劉瑾が語りかけるうちに、はやくも燈はゆらめきはじめ、

花即凋萎。

花、すなわち凋萎す。

光の花は、すぐにしぼみはじめた。

さらに、

作咤噫声、飛越数尺。濺瑾衣袍、気腥如血。

咤噫(たい)の声を作して飛越すること数尺なり。瑾の衣袍に濺ぎて、気なまぐさきこと血の如し。

怒ったような唸り声を出して、数尺の高さのところをぐるぐると飛び回りはじめ、劉瑾の衣服の上に液体(これが「玉脂」であろう)を注ぎかけてきたが、それはまるで生血のようになまぐさい臭いがするのであった。

「な、なんじゃ、これは!」

瑾以金如意碎之。

瑾、金如意を以てこれを砕く。

劉瑾は手にしていた黄金の如意棒でこれを叩き落とし、打ち砕いた―――。

「い、いったい、どういうことだ・・・、わしの大事は果たして・・・」

劉瑾はしばらく砕け散った玉脂燈を見下ろしていたが、やがて気を取直して、近侍の者を呼び寄せると、破片を片付けさせたのであった。

―――いまだいくばくもなくして、劉瑾はそのたくらみが明らかとなり、誅殺されたのであった。

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どこから持ってきたのか知らんけど、すごい宝モノがあったのですなあ。琉球国で産出したものとも思われませんので、どこかから交易で手に入れてきたのでしょう。それなら、今は沖縄には無いのだ。沖縄に無ければ南シナ海あたりにあるのであろうか。あの国の権力者は、手に入れるためにどんな手段を用いてくるか、わかったものではないのである。

 

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