平成26年2月19日(水)  目次へ  前回に戻る

 

寒いけど、そろそろ春先。

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本当かどうか知りませんが、春先になると、冬眠していた龍が起きてまいります。

龍は建物の中などに冬眠していることも多く、目覚めて出てくるときに

其破墻屋、穴如椀許大、無風雷、無風水。

その墻屋を破るに、穴は椀ほどの大の如く、風雷無く、風水無し。

建物の壁や屋根を突き破るが、その際の穴はお椀ぐらいの大きさのもの。その際、風も吹かず雷も轟かず、風も雨も無いのが本来の龍である。

これに対し、(こう・水龍)とか(しん・海竜)は風を吹かせ雷を轟かせ、大いに雨を降らせ、物を多く傷めることがある。※※

龍は蛇形、鳥形、蝦蟇形があり、また、天帝の宮殿は空中にあるのであるが、これは龍が運んでいるのだ、ともいう。

また、

龍変人形。唯生時、死時、睡時、淫時、嗔時、不能変本形。

龍は人形に変ず。ただ生時、死時、睡時、淫時、嗔時には、本形を変ずるあたわず。

龍はニンゲンの姿に変ずることができる。ただし、生まれてくる時、死んでいく時、眠っている時、あへあへしている時、及び怒り狂った時、には、本来のすがた(蛇、鳥、ガマなど)に戻ってしまうのである。

「あへあへ」や怒りは自分でコントロールできるかも知れませんが、生まれくる時、死にいく時、眠る時は自分でコントロールできませんから困りますね。今日も会社で居眠りしてしまいましたが、もう少し時間がすればわたしも本来の形に戻ってしまっていたかも知れません。戒しむべし、戒しむべし。

龍有熱沙著身、烈風壊衣之苦、有金翅鳥呑噉之苦。

龍は熱沙の身に著する、烈風の衣を壊つの苦あり、金翅鳥(こんしちょう)の呑噉の苦あり。

龍には三つの苦しみがある。一は熱い砂がからだにまとわりつくこと、二ははげしい風が表面をぼろぼろにすること、また黄金の羽持つクジャクに食われること、である。

また、

天龍為貴、海龍次之、江湖之龍又次之。井潭之龍下矣。

天竜貴と為し、海竜これに次ぎ、江湖の龍またこれに次ぐ。井潭の龍は下なり。

天の龍が最も尊貴、海の龍がその次、大河は湖の龍がそのまた次で、泉や淵にいる龍は下っ端である。

※※の記述と矛盾はしませんね。

また、

龍喜睡、数百年一覚。

龍は睡を喜び、数百年に一覚なり。

龍は眠っているのが好きで、数百年に一回しか目覚めない。

わたしの経験では、寝るのが好きなやつに悪いやつはいません。ので、これは「いい龍」でしょう。(なお、春先になると冬眠から覚める、というの記述とは完全に矛盾している。)

甚至積沙其身成村落。

甚だしきはその身に沙を積みて村落を成すに至る。

眠っているうちに体に砂や土が積み上がって、その上に村が出来てしまっている場合もある。

そんなときに、龍(←いい龍)は、

覚即脱神棄身而去、不傷於物。

覚めて即ち神を脱し、身を棄てて去り、物において傷めざるなり。

目を覚まして自分の上にひとびとの営みがあるのを知ると、すなわち精神だけが脱け出させ、身体は抜け殻にしてそこに遺して空に昇り、ひとや物を傷つけることがない。

のである。

また、

神龍行雨以利物、毒龍為悪風以害物。

神龍は行雨して以て物を利し、毒龍は悪風を為して以て物を害す。

善い龍は雨を降らしてひとや動植物を潤すが、悪い龍は不快な風を吹かせてひとや動植物をそこなうのである。

ともいう。

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まだまだ続きますが、今日はここまで。

の満州貴族・納蘭容若(または成徳)は博学を以て名高く、当時の学者たちとやりとりして知り得たことを記録して水亭雑識」四巻を成した。

不僅異聞軼事之足資考証也。

異聞・軼事の考証に資するに足るのみならざるなり。

不思議な話、記録に値する事件を記録して、いろいろ考えあわせるために役立つだけの書ではない。(人間性の向上にも役に立つ書物である。)

と評せられる。如上の「龍」のお話は同書の巻三に集中的に所収されているもの。

 

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