平成25年10月2日(水)  目次へ  前回に戻る

 

さてですなあ、慣例によりますと・・・と落ち着いて更新しようかと思いましたが、まだ水曜日。週末まであと二日もある。耐えられないので、短くやります。

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春秋の時代、狐丘丈人という賢者がおられたのだそうだ。

この賢者が、楚の宰相であった孫叔敖(そんしゅく・ごう)に語りかけたそうである。(孫叔敖についてはこちら参照→「天下三危」

三利必有三患。子知之乎。

三利に必ず三患あり。子、これを知れるや。

三つのいいことには、必ず三つのイヤなことが引っついて来ますぞ。あんたはそのことを知っておるかな?

孫叔敖曰く、

「知りません。賢者よ、お教えください」

そこで賢者説いて曰く、

爵高者人妬之。官大者主悪之。禄厚者怨帰之。

爵の高き者は人これを妬む。官の大なる者は主これを悪む。禄の厚き者は怨みこれに帰す。

身分の高いひとは、他人からねたまれるものじゃ。

権限の大きなひとは、雇い主からにくまれるようになるものじゃ。

財産の多いひとは、ひとびとの怨みつらみが集まってくるものじゃ。

これを「三利三患」というのである―――と。

なるほどなー。

ふつうのひとなら「勉強になりましたー」とありがたく聴いて、「それでは」とそれ以上議論にならないようにして帰ってくるところですが、孫叔敖は反論した。

不然。

しからず。

「そんなことはございますまい」

と言ったのだ。

吾爵益高、吾志益下。吾官益大、吾心益小。吾禄益厚、吾施益博。可以免患。

吾が爵高きを益せば吾が志は下るを益さん。吾が官の大なるを益せば吾が心は小なるを益さん。吾が禄の厚きを益せば吾が施しは博きを益さん。以て患を免るべし。

わたしの身分が高くなればなるほど、目指すところをどんどん低くしていけば如何でしょうか。

わたしの権限が大きくなればなるほど、気持ちの持ち方をどんどん細やかにしていけば如何でしょうか。

わたしの財産が多くなればなるほど、ほどこしをする相手をどんどん増やしていけば如何でしょうか。

これによってイヤなことから免れることができるでしょう。

丈人曰く、

善哉言乎。

善いかな、言や。

よう言うたもんじゃのう。

以上。

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明の鄭瑄「昨非庵日纂」巻十四より。(これももとは「淮南子」あたりからの引用かな?)

そういえば町では共同募金が始まっております。禄の厚いひとはますます施し博なることが必要カモ知れませんよ。わたし? わたしは募金は慣例により市民球場の樽募金以外は・・・させていただいておりますので・・・。

なお、今日は伊勢神宮(内宮)の御神体遷御の儀なりという。ということは新月の闇の夜なのだ。

 

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