平成25年8月19日(月)  目次へ  前回に戻る

 

相変わらず暑いですね。

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清の時代のことでございます。桐城の陸敬安という書生が言う。

―――うちのおやじは台州に行って、すてきな木材を買ってきた。

これを使って

製為棺。

製して棺を為らん。

棺桶を作ろうと思うのじゃ。

というのだ。

棺桶ができあがってくると、喜んで、その蓋に

止止居

止まるに止まるの居

「止まるべきところで止まった者の棲家」

と黒々と書きつけた。

「これが表札じゃ」

そして、その両側に

「表門の左右には対聯が無くてはならんからな」

と言いながら、

一生悠忽少壮老、  一生 悠たるに忽ち 少壮老、

万事脱離帰去来。  万事 脱れ離れん 帰去来。

 ただ一回の人生、ゆっくりしていたらあっという間に過ぎる 少年、壮年、老年と

 よろずのことからもう、遁れ離れていこう 帰ろ去らんかな(帰りなむ、いざ)。

と書きつけた。

「少・壮・老」と「帰・去・来」の対句、かなり評判になった。

その後今までつつがないので、棺桶はまだ使われず、おやじは毎年正月になると元旦の最初に墨を磨って蓋の上の文字をとめ直している。

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立派なおやじさんですね。夏バテ+肥満により体調も悪く、しごとも辛くなってきて心も弱ってきましたので、わしもそろそろ用意するか。

清・梁恭辰「楹聯四話」巻五より。ちなみに梁恭辰は「楹聯叢話」「二話」「三話」を著した梁章鉅の三男で、「楹聯叢話」から「四話」までを合わせて「梁氏四書」とも申します。

 

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