平成24年4月20日(金)  目次へ  前回に戻る

 

みなさん、こんにちわーちゅ。二世・肝冷斎でちゅ。一世・肝冷斎は、昨日、錫杖を振り回していた後、胸を押さえてぶつぶつ言っていましたが、その後ついに・・・。そこで、今日からはおいらが更新いたちまーちゅ。

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二世・肝冷斎でちゅので、一世が書かなかったようなテキストを引いてみまちゅ。

今はむかしのこと、範久阿闍梨という僧がいたのだそうでございます。

阿闍梨は、比叡山中の楞厳院に住持しておられた。

この方、

ひとへに極楽をねがふ。

とにかく、極楽往生を強く願っておられた。

そして、

行住坐臥西方をうしろにせず、つばきをはき、大小べん西にむかはず、いり日をせなかに負はず。

歩くにも止まるにも座るにも寝るにも西を後ろにするということはなかった。唾を吐き、あるいは大小便をするにも、西に向かってはしなかった。また、西に沈む太陽を背中にすることも無かった。

西坂より山へ登るときは、身をそばだてゝ歩む。

西側の坂から比叡山に戻ってくるときは、体を横向きにして歩いて登るのである。

カニ歩きをしていたのだ。

つねにまわりの人に

うへ木のたふるゝ事、かならずかたぶくかたにあり、心を西方にかけんに、なんぞ心ざしを遂げざらん。りんじう正念うたがはず。

植木を観てみよ。倒れるときは、必ず少しでも傾いていた方に倒れるものじゃ。わしのように「西へ西へ」と思い込んでおれば、どうして志を遂げないということがあろうか。終わりに臨んで正しく念仏することになるであろうこと、間違いないぞ。

と言うておられた。

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立派なひとでしょう。素直に感動しました。一つのことに夢中になれるひとは、それだけで尊敬します。もちろん極楽往生した・・・と「往生伝」に書かれているそうです。

「宇治拾遺物語」上の末一巻より。

 

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