平成23年11月5日(土)  目次へ  前回に戻る

 

明日も休み。うひゃひゃ。

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今日は「平平無奇」という四字熟語についてお話しましょう。

後漢の班超は若いころ刀筆の吏であったが、あるときついに

「こんなことやっとれるかー!」

とキレて、筆を投げ出し、志願して西域に向かいまして、三十年の長きにわたって後漢帝国の武力を背景に、西域都護として砂漠に点在する都市国家と、草原を往来する遊牧民たちを攻略し制圧し支配したひとであります。

その彼も七十の年となり、ついに隠退して都・洛陽に帰ることになった。

後任として赴任してきたのはまだ若い任尚という校尉であったが、班超に西域を治めていく方法について、ぜひ教えてほしいと乞うた。

班超は、

「わしは年老いていろんなことを忘れてしまいました。任君はお若いがこれまでにもいろんな大役を務めてきておられると聞き及びます。わしのごときが申し上げることがございましょうか。

ただ、どうしても、とおっしゃるなら、次のことだけ申し上げておきましょう。

すなわち、

塞外吏士本非孝子順孫、皆罪禍徙補辺屯。而蛮夷懐鳥獣之心、難養易敗。

塞外の吏士もとより孝子・順孫にあらず、みな罪禍により辺屯に徙補さるるなり。しかして蛮夷は鳥獣の心を懐き、養いがたく敗れやすし。

あなたの部下となる陽関以西の西域地区の官僚や兵士どもは、ご承知のとおり親に孝行な子どもや家長に従順な子孫などではございませぬ。みな、本国で何かを仕出かして、罪をあがなうためにこの辺境に移されたり飛ばされたりしてきたばっくれ者ばかりです。また、あなたが相手をする野蛮な異民族どもは鳥獣レベルの精神状態のやつらなのです。何とか落ち着かせてやろうと思ってもすぐにダメになってしまいやがるのです。

あなたが、性急に厳格な統制を行おうとしても、わたしがやれたようにはうまく行きますまい。うはは。

まさに

水清無大魚。

水清ければ大魚無し。

澄み切った水には小魚しか住めない。大きな成果をあげるには少し濁っている方がよい。

と申しますとおりじゃ。

どうぞ、

宜蕩佚簡易寛小過総大綱而已。

よろしく蕩佚簡易にして小過を寛うし、大綱を総ずべきのみ。

いい加減にしてさぼって、細かいことは指摘せず、小さな過ちは放っておかれて、重要なポイントだけ押さえておかれるようにだけしてくだされ」

「なるほど、ありがたいお言葉、ありがとざーした」

そして、班超は都に帰って行ったのであった。

班超が帰った後で、任尚は側近の者に言うたという。

我以班君当有奇策。今所言平平耳。

我、班君を以てまさに奇策あるべしとなす。今、言うところ平平のみ。

「わしは、班超さまほどの方じゃ、いろいろと人の思いつかないような戦略があるのかと思うて訊ねてみたのじゃが、班超さまがおっしゃることを聞くに平凡なことばかりであったわい」

「もうお歳でございますから、お若いころの奇策をお忘れになったのでは?」

「うむ・・・。いや、もしかしたら奇策をわしに伝えるのがイヤだったのかも知れぬな。・・・わしが自力で見出さねばならん、ということか。やはりわしがのう・・・」

「おお、わが殿の知謀を以てすれば班超さまにも考えつかなかったような奇策も見いだせましょうぞ」

「いやいや、そんなことは・・・そうかものう、わっはっは」

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これが「平平無奇」(平凡で、あっというような奇策がない)という四字熟語の典故です。「後漢書」巻七七「班超伝」より。

では。

 

あ。

そうだ。

忘れていました。

その後のことです。

尚至数年而西域反乱以罪被徴。

尚至りて数年、西域反乱し罪を以て徴(め)さる。

任尚が赴任してきてからわずか数年ならずして、西域は大いに乱れ、収拾がつかなくなった。任尚は責任を問われて呼び戻され、ついに罪に陥とされたのだった。

以降、後漢帝国の西域経営は頓挫し、シルク=ロードの支配は遊牧民たちにゆだねられていったのである。

―――ということで、「平平無奇」とは、「平凡に見える対処(が一番いい対処法である)」という意味でつかわれるのでございます。

わしが、いつも職場で居眠りばかりしていて無策に見える理由がこれでおわかりいただけましたでしょう・・・いや、職場のひとたちにはちょっと難しすぎて理解してもらえないかな? え? 「平凡の域にも達していない」? まあ、明日も職場行かなくていいから理解してもらえなくてもいいや。

 

(なお)

本日は西川口へ行ってきました。西川口で「いいところ」へ行ったのではなくて、以下に行った。

平成23年11月5日(土)  1900(1835)〜2140

西川口ライブハウス ハーツ

山崎ハコ「プレミアムライブ」with安田裕美

(曲目)

1. オーディション (←アルバム収録の19のころの声とまったく一緒)

2. 桔梗の花

3. 「炭坑節」から流れで)織江の歌 (←ハコさんの「炭坑節」が聴けるなんて! 福岡モンとして大感激っす)

4.(「島原地方の子守唄」から流れで)てっせん子守歌 (←「島原地方の子守唄」は、「ライブU」収録に比べると少しコブシを利かせるようになった?)

5.(「サマータイム」から流れで)ヨコハマ

6.りんご追分 (←涙出る)

(休憩)

7.ざんげの値打ちも無い (←前回よりも「上手く」なったように思われます)

8.「海の子ども」(オ・インファンテ) (←ハコさんが訳したファドなんだそうです。また聞きますよ)

9.横浜ホンキイトンク・ブルース

10.ビートル

11.あなたの声 (←これもすごくいい歌になってきたように思われます。10〜11の間に不覚にも涙ぐむ)

12.サヨナラの鐘 (←アルバム所収が本来より半音高くなっている理由についてひとくさり)

(アンコール曲)

13.気分をかえて (←本日は会場ほぼ全員手拍子)

14.会えない時でも (←しばらく山に籠ってアルバム作成に取り掛かるようなことをぼそぼそと)

※→ちょっと普段よりお客少なかった感じありました。

 

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