平成23年10月13日(木)  目次へ  前回に戻る

 

紀元前四世紀のアテナイの町で、樽の中でごろごろと暮らしていた「犬儒派」シノペのディオゲネスは、ひとから

「おまえはなぜ自分のことを「イヌ」と名乗っているのか」

と問われて、

ものをくれるやつには尻尾を振ってやる。

ものをくれないやつには吠えかかってやる。

悪いやつには咬みついてやるからだ。

と答えたという。

――「おお、それではイヌは悪いやつに咬みつく分だけニンゲンよりマシですなあ」

といいたくなってきます。

しかし、ディオゲネスにとっては「人間」というものは立派なものだと理解されていたらしい。

あるとき、真昼間から、ディオゲネスはランタンに灯をともしたものを手にしてアテナイの市場を歩き回っていた。

あるひとが

「何を探しているのか、ディオゲネスよ」

と問うと、ディオゲネスは

わたしは人間を探しているのだ。

と答えたというのである。

――「そうか、すなわち、人間の形をしたニンゲンはイヌ以下だ、ということかも知れませんなあ」

と勝手に納得します。

ところで、世の中にはいまだに、地域概念である古代ギリシアと、現代の経済・財政のどうしようもないギリシアという國を混同しているひとがいるらしいのでここにそうではない、ばーか、ばーか、と注意を喚起しておきますよ。「民族」だってほとんど違うのに。ついでに、現代のチュウゴク(中華人民共和国、あるいは中華民国)という國と、歴史シナ、あるいは古代中国文明を同一視してしまっているひともたくさんいるので、ほんとにおまえらばーか、ばーか、おおばーか、と注意喚起しておきますね。

シノペのディオゲネスはもとシノペの世襲銀行家であったが、母国で通貨偽造した罪の問われて追放され、アテナイでごろごろ人間になったのだということだ。今、あちこちで信用を「偽造」しているやつらもいずれは「哲学者」になるのであろうか。われわれに至っては信用さえ「偽造」できないのだ、「不平家」にはなりえても「哲学者」にはなりえないであろう。

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とゴタクを並べているうちにまた深夜になってしまいました。明日休みだと思っていたのに、今日はまだ木曜日で明日はしごと日だと気づいたので、もう寝ます。いつまでもそんなものにかかずらわっているわしこそ、ほんとにばーか、ばーか、かも。

 

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