平成23年6月28日(火)  目次へ  前回に戻る

 

表のしごとと飲み会で更新する力が薄れてまいっております。

今日はこの何年間も経験したことのない酔い方をして気持ち悪くなってしまい、また飲み会の席上で爆睡。打ちひしがれて帰ってきた次第。

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紀元前11世紀のことにござります。

尚書・武成篇によりますと、殷の悪王・桀を討伐した周の武王は

偃武修文。

武を偃(や)め、文を修む。

武闘を終わらせ、文政によって天下を治めることとした。

この「偃武」という言葉に倣いまして、我が国でも大阪夏の陣が終わって徳川に天下が帰したのを、当時の年号を使いまして「元和偃武」と申します。

武王は命じて、

帰馬于華山之陽、放牛于桃林之野、示天下弗服。

馬を華山の陽に帰し、牛を桃林の野に放ちて、天下に服せざるを示せり。

ウマを河南の華山の南麓に帰らせ、ウシを桃林という原野に放牧して、天下にもう戦いをしないことを示した。

唐の孔頴達の説(「書経疏」)によれば、

此是戦時牛馬。

これはこれ、戦時の牛馬なり。

このウシとウマは戦いのためのウシとウマであった。

シナでは紀元前三世紀ごろまで「騎馬」戦術は使われておりませんでした。ウマは戦時にはいわゆる「戦車」を引くために使われた。「戦車」戦術においてはウシも速度の問題はあれ、ウマと同様に扱えます。

孔頴達またいう、

「天下に服せざるを示す」というのは、

示天下不復乗用。

天下にまた乗用せざるを示すなり。

天下にもう一度これらのウシ・ウマを戦車に用いることがないことを明らかにしたのである。

「服」は「復」の意。また、「乗」は「の・る」だと訓じてはいけませぬ。これは戦車を四頭立てで引っ張ることを言うので、「乗用」は乗るのに使うのではなくて戦車の牽引に使うことなのである。

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何が言いたいかと言いますと、わたしもこれらのウシ・ウマのようにそろそろ華山の南麓、桃林の原野に放たれるのは近い、ということなのでございます。

漢の英雄(淮陰侯韓信)の語に「狡兎死して良狗は烹らる」というのがありますが、それは「良狗」の場合でありまして、能力のあるイヌは危険でございますからな。烹てしまうしかないのでございましょう。しかしわれらごとき何の変哲も無く、どちらかといえば駑馬犂牛の類は、偃武の後は年金もらって平和にごろごろ暮らすことができるのよー。ぜったい。わしは信じている。

 

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